●ランケの考え~植民地の拡大と世界征服~
そういうことで、レオポルド・ランケの考えと西田幾多郎先生の立場を付け加えていきたいと思います。
ドイツの歴史学者ランケの世界史的立場というのはどういうものであったか。先ほど申し上げたように、「全ての時代は神に直結する」ということで、その意味では、現在も過去も未来も神につながっているという考え方です。それを現実にあわせてみると、19世紀後半からの西欧の植民地拡大の動きで、それに対して何とか独立しようという日本の考えに何か役に立たないか、そんなことを勉強されたのが、先ほどの鈴木成高さんです。その鈴木成高さんと父たちの歴史的世界が、お互いに交流をするわけです。
では、この植民地の拡大というのは、いつから起こったのか。私は、やはり1492年のコロンブスによる新大陸発見とか、その後に続くマゼランの世界一周によって、世界というものが初めて全体像として捉えられるようになったということで、15世紀後半、あるいは、16世紀からだと思います。
そのときから、いわゆる大航海時代を迎えます。世界を征服するために必要なものとして、ちょうどその頃、産業革命が起こってきて、近代的技術も発展します。その近代的技術というのは、機械の発展です。ですから、グローバリゼーションというのは、もともとこの時期から起こっていると考えた方がいいのだろうと思います。
●ランケの考え~ヨーロッパの世界史と、文明と野蛮の二元論~
では、西欧の中で、誰がリーダーだったかというと、最初はご存知のようにポルトガルであり、スペインであったのです。それから、オランダ、イギリスへと移っていきますが、西欧社会が世界をリードする流れは変わっていません。これは、ランケのいうヨーロッパとは、地理的概念ではなく歴史的・文化的概念だったということです。ですから、ヨーロッパは多くの民族に分かれながら、精神ないし文化における統一性を持っている。ルネッサンスが古典への復帰であり、宗教改革が原始キリスト教への復帰であったように、ヨーロッパには原点となる精神がある。ヨーロッパは自己革新するために、根源的精神への復帰を媒介する。そのために、そこにヨーロッパの世界史というものが構想されるのだと、ランケは言っているわけです。
ヨーロッパにおける世界というのは、諸民族個別の歴史の集積ではなく...