過去から未来へ、京都学派の役割
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吉田茂に「国会議員になったら」と誘われた兄の議論力
過去から未来へ、京都学派の役割(4)父・髙坂正顕と兄・坂正堯の眼
髙坂節三(公益財団法人 日本漢字能力検定協会 顧問)
哲学者として京都学派を代表する父・髙坂正顕の息子でありながら、父とは異なる道を歩んだ国際政治学者・髙坂正堯。親子の心の交流とそれぞれの道を究めた過程を、髙坂節三氏が客観的視点をもって丹念に語る。(全5話中第4話目)
時間:15分54秒
収録日:2014年7月18日
追加日:2014年9月30日
≪全文≫

●父の戦後-著述の日々と民主主義の分析


 戦争に負けた後、公職追放になった父は、終日書斎にこもって著述に専念しています。特に時代の流れ、時代の要請に応えるように、実存哲学、プラグマティズム、ニヒリズム、マルクス主義などに関する著書を出版しています。中でも『キェルケゴールからサルトルへ』とか、『ハイデッガーはニヒリストか』などは、よく読まれたようです。

 父はだいたい4時か5時には起きて、一人でコーヒーを入れて勉強をして、玄関には「午前は仕事中」と張り紙をして、お客さんと話をする、あるいは、子どもたちと話をするのは昼からと、こういうことでした。

 同時に、岩波書店が非常に左翼的な動きを強めます。そうした中で、同人雑誌的な『心』という雑誌が出ますけれども、ここに保守主義的と呼ばれた人たちが投稿します。竹山道雄だとか、福田恒存、亀井勝一郎とか、あるいは久山康といった人たちが、『戦後日本精神史』や『現代日本のキリスト教』など、戦後思想の動向を分析して発表しています。

 また、父は日本国際連合協会京都本部が出している「民主主義の再検討」という小冊子で、民主主義の系譜とその本質について分析をした後で、「民主主義は王制や貴族制に比べて運営がよければいい。けれども、下手をすると衆愚政治に陥る」ということを書いています。当時、「民主主義というのは、全てに勝る」「これ以外の制度は皆駄目だ」というような風潮だったときに、やはり物事を相対的に見ることが重要であると考え、「民主主義であったらいいのだ」という絶対的なものではないけれども、「うまく運営すれば、確かに一番いい」というような言い方をしております。


●糺の森がもたらした「森の崇高性」の思索、そして父と兄の語らい


 その頃は、父は毎日勉強して、後は散歩に行くのですが、京都の下鴨神社にほとんど毎日のように散歩で行っています。下鴨神社と糺の森(ただすのもり)は世界文化遺産になって、今、私もそこの保存会の役員をしております。

 次のような言葉にも父の感じが出ていると思うのですが、「糺の森の崇高性は、悠久とはいえ滅び行くもの。生と死の間にあるものの、しかも自ら示す悠久性のゆえの崇高性であると。人は人間の人格における崇高性と共に、例えば森に現れるような朽ち行き得る、しかし深い自然の崇高性を尊ぶことを忘れてはいけない。私は森...

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