日本のジャーナリズムを建て直すために~朝日新聞の慰安婦問題を斬る~
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
叩かれ弱く問題の撤退戦がうまくいかなかった大手メディア
日本のジャーナリズムを建て直すために~朝日新聞の慰安婦問題を斬る~
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
朝日新聞が2014年8月5日と6日に掲載した慰安婦問題の特集をきっかけに、今さまざまな議論が起こっている。曽根泰教氏が問題の要因や背景を解説しつつ、日本のジャーナリズムを建て直すための重要なポイントを語る。
時間:17分25秒
収録日:2014年9月11日
追加日:2014年9月28日
≪全文≫

●たたかれ弱く、問題の撤退戦がうまくいかなかった朝日新聞


―― 朝日はなぜ、こんな失敗をしたのですかね。吉田清治さんの記事でガセネタをつかまされたのもどうかと思うのですが、今回、あまりにもリスクマネジメントができていなかったという気がします。

曽根 もう、撤退戦の下手さ加減ですね。そういう意味でいうと、基本的にインテリなのです。ですから、理研のようなものです。笹井さんのように自殺してしまう。たたかれ弱いのです。本来、マスコミにいたら、たたかれ強いはずですよね。ところが、失敗したことがないエリート連中なのです。

―― なるほど。そういうことですね、先生。

曽根 ですから、負け戦です。どう考えても、吉田清治さんの大嘘を書いてしまったのだから、どこかで訂正しなければいけないのです。ところが、本人たちとしては、「通常の手続きで取材をして書いたのだけれども、たまたま相手が嘘を言っているのを見抜けなかった。だから、悪いのは俺ではない」ということでしょう。しかし、途中から「あれは嘘だ」と指摘されているのです。少なくとも、秦郁彦さんが言ったときに、訂正すべきだったのです。

また、今度は官僚機構として、社内的に政治部は「訂正しろ」と言って、社会部の方は「訂正したくない」と言って、だから、あいまいにしたのです。それが先延ばしになって、最後につけが大きくなってしまったのです。つけが大きくなったのはいいのだけれども、この訂正記事は確かに半端です。池上彰さんが言うことはもっともです。しかし、週刊文春と週刊新潮の広告掲載拒否、それから、池上さんの記事を載せないという、また恥の上塗りをしたのです。

―― 本当あり得ないですね。

曽根 つまり、失敗の上に失敗を重ねたのです。ですから、致命的になってしまったのです。

検証は、木村伊量さんが従来の朝日の文脈ではできなかったものをやった、大英断なのです。しかし、その大英断も批判されるに決まっています。ましてや、朝日を批判することを飯の種にしている人がたくさんいるわけですから。その中で、どうやって自分のポジションを維持するかということができなかった。つまり、撤退戦がうまくいかなかったのです。

―― その「朝日の中で大英断だ」という内部のロジックと、表から見たときのそのロジックというのは違いますよね。

曽根 違います。今まで朝日の記事に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史