●コロナ後のモノづくりは何を起点とするか
―― (小林先生の前回のお話については)小宮山先生、いかがでしょうか。
小宮山 非常によくまとめていただいたと思います。やはりベースは温暖化ですね。結局、産業革命で20世紀に人間の活動がすさまじく膨張しました。これによってほとんどの人が食べられるようになったわけですから、人類にとってはメリットのほうが大きかったと言えます。逆に産業革命以前では、ほとんどの人が食うに事欠いていたのです。
それが、ほとんどの人が食べられるようになってきたのは産業革命のおかげだし、長生きできるようになったのも産業革命のおかげです。大体はいいことが多かったのだけれども、基本的には人間の活動が増えてしまったおかげで、地球が小さくなったということになります。そのための問題が、「化石資源を使えない」というような話になってきているわけです。
ただ、幸いにして新しい科学技術というものがあります。今、エネルギーの分野でいうと、世界平均すれば再生可能エネルギーが一番安い。そういうところまで世界の科学技術は来ています。
小林さんが言われたのは「モノづくり」の話で、「この後、一体何からモノづくりをするのか」が問題になります。何を起点にぐるぐる回せばいいのか、ということです。
私は、回す手段として林業に着目しています。日本の林業は、本当に真面目にやれば、今の化学会社が使っているぐらいのカーボンは木から供給できるのです。それをつくっていくようなことは、社会が全体としてそのようにしようという思いになれば、多分できる。もちろん、そのためには新しい科学技術の開発も必要になりますが、それもおそらく開発できるだろうと思います。ですから、やはり「プラチナ社会」ですね。「KAITEKI」社会」でもいいですけどね。
●人類のロマン、核融合と人工光合成
小林 あとは、人類というのはロマンがないと面白くない。核融合や光合成は、50年も100年もやってなかなかうまくいかないのですが、こういうのもまだまだやりたいですね。
小宮山 核融合をやるなら、地球上でやらないほうがいいですよ。
小林 そうかもしれないですね。
小宮山 あれは、太陽ぐらい巨大になれば、宇宙にぽっかり浮いているので、非常に安全なわけです。だから、火星でやるとか月でやるとか、そういったロマンはあってもいいと思います。地球上で電磁力を用いてプラズマを閉じ込めて無理やり核融合をやって、どうやってエネルギーを取り出すのかというのはあまり賢くないですよ。もう少し頭のいい方法を考えないと。
小林 光合成についてはどうお考えですか。エネルギー密度が低いからやめておいたほうがいいという人もいますが、どう思われますか。
小宮山 今、現実的なのは、申し上げたように林業ですね。真面目に切って植えていく循環をつくれば、だいたい炭素にして3000万トンぐらい、日本国内で生産できると思います。
まず、これに着手して、その次にハイブリッドポプラのような、光合成効率のいい木を植えていくということがある。その先に、さらにいうと「人工光合成」といったようなものがくるだろうという認識です。
小林 あとは「カーボンリサイクル」といわれているエア中のCO2キャッチャー。水素を使うかどうかは別として、その辺りのケミストリーというのはまだあると思うのです。
小宮山 私もそう思います。空気から直接CO2を回収するというのは、本当に計算した人がいて、不可能ではない値が出てきています。あそこの効率をもっと上げるような手段が何か生まれればいけるはずです。
自動車にしても、全部が完全に電気自動車に移行するかどうかというのは、難しいところがあります。そうなると、どこかでCO2を出さなくてはならないところがある程度ありますから、その分を空気から回収するということですね。
小林 やはり戻す方法がないと、たまる一方ですからね。
小宮山 そうですね。
●ポストコロナの日本を変えるヒントとは
―― ここまでのお話で、いろいろな道をお示しいただきました。こういうビジョンがいいのではないか、こういう技術がいいのではないかと具体的なお話でした。
ここに立ちはだかってくるのが、先ほどもお話があったように、日本はなかなか進まないというか、実装できないということです。新しい社会を構想したときになかなかそういう社会に移っていかないという問題があるかと思うのです。
ポストコロナにおいて、新しい方向性を加速していくために、どのようにこの国を変えていけばいいかということもぜひ、お知恵をいただければと思うのですけれども、まず小林会長、いかがでしょうか。
小林 それが、今さっといえれば、こんなうれしいことはないですね。日本の社会の問題...