『孫子』を読む:作戦篇
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「戦わずして勝つ」ための究極の国防は財政にある
『孫子』を読む:作戦篇(1)戦争とは「財政」
田口佳史(東洋思想研究家)
『孫子』の戦略哲学は、現代ビジネスにおいても多くの示唆を与えてくれるところから、多くの経営者が日頃の実践に生かしていることも多い。なかでも、戦争にあたって最も重要なことは、戦いに対して日頃の備えが十分にできているかどうかである。この点で、『孫子』の作戦篇の冒頭で指摘している財政の重要性について、田口佳史氏の解説から学んでいくことにしよう。(全3話中第1話)
時間:11分26秒
収録日:2020年1月24日
追加日:2020年8月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●戦争で本当に重要なのは戦車よりも輜重部隊


 今回は『孫子』の2篇目、作戦篇です。冒頭で孫子は、「孫子曰く、凡そ兵を用ふるの法、馳車千駟(ちしゃせんし)、革車千乘(かくしゃせんじょう)」と言っています。「馳車」というのは戦車のことで、戦車が1000台です。それから「革車」というのは輜重(しちょう)です。輜重兵といえば、要するに、兵器とか、食料とか、衣服とか、そういうものを運搬する兵士のことで、その運搬部隊が1000台です。戦車が1000台あって、そして運搬部隊が1000台ある。そういうことを言っています。

 どういうことかといいますと、つまりどちらが重要なのかということですが、それは戦いになれば、戦車のほうが重要です。よく考えれば分かりますが、例えば、戦場で兵士の靴が片方脱げてしまい、それで片方が裸足になったとします。そういう状態で戦えば、戦力がガタ落ちになってしまうわけです。

 そのときに、この輸送部隊に行って「靴をくれ」と言えば、パッと靴が貰える。そしてまた補給します。そういうことがとても大切だということを考えると、むしろこの革車、つまり輜重部隊のほうが大切なのではないかと。そこから要するにロジスティックという言葉が出てくるわけです。やはり運送、配送部隊というものが、非常に重要だということを言っているわけです。

 そして「帶甲」、要するに兜を帯びた兵士が10万です。それだけのものを「千里に糧を饋(おく)れば」と言っていますから、ここで孫子が冒頭、非常に注意を促しているのは、これは遠い戦場に兵を送るときの注意点であって、真っ先にこれから始めているということは、要するに遠くの戦場に兵士を送ることはとても難しいことであり、そのような戦いなのだということを言っています。

 これは今のわれわれにとって、何を言っているのかを考えてみると、もう商圏は国内だけではダメなので、海外へ目を向け、要するに海外にビジネス範囲を広げるということは安易に考えがちなんですけど、それはものすごく難しいことだ言っているわけです。

 そして、「則ち内外の費、賓客の用」と言っています。「則ち内外の費」というのは、国の内・外です。それから「賓客」ですが、これは外交使節の費用、そういうものです。戦争というのは、勝っている...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史