『孫子』を読む:作戦篇
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「戦わずして勝つ」ための究極の国防は財政にある
『孫子』を読む:作戦篇(1)戦争とは「財政」
田口佳史(東洋思想研究家)
『孫子』の戦略哲学は、現代ビジネスにおいても多くの示唆を与えてくれるところから、多くの経営者が日頃の実践に生かしていることも多い。なかでも、戦争にあたって最も重要なことは、戦いに対して日頃の備えが十分にできているかどうかである。この点で、『孫子』の作戦篇の冒頭で指摘している財政の重要性について、田口佳史氏の解説から学んでいくことにしよう。(全3話中第1話)
時間:11分26秒
収録日:2020年1月24日
追加日:2020年8月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●戦争で本当に重要なのは戦車よりも輜重部隊


 今回は『孫子』の2篇目、作戦篇です。冒頭で孫子は、「孫子曰く、凡そ兵を用ふるの法、馳車千駟(ちしゃせんし)、革車千乘(かくしゃせんじょう)」と言っています。「馳車」というのは戦車のことで、戦車が1000台です。それから「革車」というのは輜重(しちょう)です。輜重兵といえば、要するに、兵器とか、食料とか、衣服とか、そういうものを運搬する兵士のことで、その運搬部隊が1000台です。戦車が1000台あって、そして運搬部隊が1000台ある。そういうことを言っています。

 どういうことかといいますと、つまりどちらが重要なのかということですが、それは戦いになれば、戦車のほうが重要です。よく考えれば分かりますが、例えば、戦場で兵士の靴が片方脱げてしまい、それで片方が裸足になったとします。そういう状態で戦えば、戦力がガタ落ちになってしまうわけです。

 そのときに、この輸送部隊に行って「靴をくれ」と言えば、パッと靴が貰える。そしてまた補給します。そういうことがとても大切だということを考えると、むしろこの革車、つまり輜重部隊のほうが大切なのではないかと。そこから要するにロジスティックという言葉が出てくるわけです。やはり運送、配送部隊というものが、非常に重要だということを言っているわけです。

 そして「帶甲」、要するに兜を帯びた兵士が10万です。それだけのものを「千里に糧を饋(おく)れば」と言っていますから、ここで孫子が冒頭、非常に注意を促しているのは、これは遠い戦場に兵を送るときの注意点であって、真っ先にこれから始めているということは、要するに遠くの戦場に兵士を送ることはとても難しいことであり、そのような戦いなのだということを言っています。

 これは今のわれわれにとって、何を言っているのかを考えてみると、もう商圏は国内だけではダメなので、海外へ目を向け、要するに海外にビジネス範囲を広げるということは安易に考えがちなんですけど、それはものすごく難しいことだ言っているわけです。

 そして、「則ち内外の費、賓客の用」と言っています。「則ち内外の費」というのは、国の内・外です。それから「賓客」ですが、これは外交使節の費用、そういうものです。戦争というのは、勝っている...

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