『孫子』を読む:作戦篇
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「国民を不幸にするのが戦争」を前提に国家を考えるべき
『孫子』を読む:作戦篇(3)国民の幸せ、国家の安泰のために
田口佳史(東洋思想研究家)
「国民を幸せにするのが国家であり、国民を不幸にするのが戦争である」と『孫子』は説いている。そして、常に冷静さを保ちながら慎重に物事を進めていくことができれば、「戦わずして勝つ」という究極の戦術が実現できる。世界のあちこちで緊張が高まっている現在、あらゆるリーダーが心して孫子の言葉に耳を傾けてほしい。(全3話中第3話)
時間:14分36秒
収録日:2020年1月24日
追加日:2020年8月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●現地を活用する戦略を立体的に考える


 その次は、「善く兵を用ふる者は、役、再籍せず、糧、三載せず、用を國に取り、糧を敵に因る」です。これはどういうことかといいますと、要するに「善く兵を用ふる」というのは、簡単にいえば、戦略をしっかり立ててやることです。前回言ったように、緒戦に全力投球して、それでこちらが優勢になっているときに終戦工作をすることで、短期間にパッと勝って終わるというのが基本です。何事においても、ビジネスも人間関係も、全部そうなのです。

 そのような意味で、「役、再籍」とは、二度と兵を集めないということであり、2度も3度も兵を集めるような長期戦にしないということが、とても大切なのです。そして「糧」は食糧のことですが、食糧もまったく同じで、ここで「三載」というのは、3度も運ばせるという意味です。そして「用を國に取り」とは、要するに武器・弾薬とか、機材とか、そのようものが必要であれば、現地調達するということです。したがって、そういうときは、あらかじめ現地のどのようなところから、どんどん供給するということを、私たちは考えておかなければいけないのです。

 そういうことから、「糧を敵に因る。故に軍食足る可し」となるわけで、海外ビジネスなどで海外戦略を行うときには、やっぱり現地の人間を、現地の風習・慣習に則って、うまく使っていくことが大切です。現地にいい協力会社をつくって、そこから資材を供給するなどということも、立体的に考えていかなければ、海外戦略などはうまくいかないということを言っているわけです。

 次に進みます。「國の師に貧しきは、遠く輸<おく>ればなり」ですが、国が大軍のためにどんどん貧しくなっていくのは、遠くへ大軍を送るからだと言っています。したがって、遠くの領地を取りにいくとか、戦場を遠くに求めるなどということは、大変難しいことだと思いなさいということです。

 これは鋭いアドバイスで、ビジネスで考えた場合、自分のところのシェアが一番取れているマーケットがあったとしても、その強化をとことんやり尽くしたか、ということを言っているわけです。自分のところの本丸のマーケットが、まだまだ開拓不足であるにもかかわらず、その次のマーケットへ行くなどということは、よくやりがちな...

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