『孫子』を読む:作戦篇
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全力を集中して徹底的に「緒戦で勝つ」ことが重要だ
『孫子』を読む:作戦篇(2)「兵は拙速を聞く」の本意
田口佳史(東洋思想研究家)
戦争において一番良くないのは、長期戦によって国が疲弊してしまうことであると『孫子』は強調する。戦いが始まったら全力投球で優勢に立ち、有利なうちに終戦工作を進めることが何よりも重要なのだという。これはビジネスにも当てはまり、短期集中でマーケットのシェアを獲得することである。そのためにも緒戦を制することが、「戦わずして勝つ」という『孫子』究極の戦略の第一歩となる。(全3話中第2話)
時間:10分27秒
収録日:2020年1月24日
追加日:2020年8月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●勝ち負けはできるだけ早く決着をつける


 次は、「其の戰を用ふるや、勝つも久しければ、則ち兵を鈍らし鋭を挫く」です。つまり、戦いになかなか決着がつかず、勝つことができないわけです。言ってみれば、ズブズブと悪戦苦闘の中へ入っていくということです。そうしていると、どうなるのかということですが、要するに常に緊張感を持っていなければいけなりません。なにしろ、命の奪い合いをするのが戦争ですから、緊張感を持ってずうっといなければいけないのです。それが長時間続くわけです。そうなればなるほど、兵士だってくたびれてしまうわけです。ですから、「勝つも久しければ」というところが非常に重要で、要するに、勝ち負けなどというものは、早く決着をつけるべしと、孫子はまず言っているわけです。

 さらにもっといけないのは、「城を攻むれば、則ち力屈す」です。城というのはどういうものかというと、なかなか落ちないようにできているというのが常識で、その城攻めをするなどというのは、へたをすれば、ものすごく力が尽きてしまいます。そして、「久しく師を暴<さら>せば」というように、大軍をいつも戦場にさらしておけば、「則ち國用足らず」という、要するに兵士がそこに存在しているだけで、「日に千金」が費やされていくわけで、国の費用がどんどん足りなくなると、そのようなことを言っているのです。

 それから「夫れ兵を鈍らし鋭を挫き、力を屈し貨を殫<つく>さば」ですが、今挙げたように、兵士はもう生気も何もなく、元気もありません。そのようなことで、兵士を鈍らし、そして鋭さも挫き、さらに力を屈するのです。とにかく、力がどんどんなくなっていって、さらに国の費用もどんどん減っていくということになれば、「則ち諸侯其の弊に乘じて起らん」となり、必ず第三国、第四国、第五国が、この弱ったところにバッと入ってきて、漁夫の利を得ようとするわけです。そのようなことは、常識だと思わなければいけないのです。


●長期戦こそ国家衰亡の危機を招く


 例えば、アフリカの野獣などに、弱ったところを見せたらもうダメなので、それこそパタッと倒れて死ぬというようなものです。ですから、このように周りの国々などというものは、油断ならないものであると、考えれば考えるほど、要するに...

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