『孫子』を読む:謀攻篇
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「戰はずして人の兵を屈する」ことが善の善なるものである
『孫子』を読む:謀攻篇(1)外交力が最大の国防
田口佳史(東洋思想研究家)
最強の兵法である『孫子』の中でも謀攻篇は、戦闘に拠らずに勝利を収めるための究極の戦術論を解説している。その象徴的なものが「戦わずして敵の兵を屈する」ということなのだが、この言葉が意味するところは実際の戦法の理論ではなく、外交の重要性を第一としている。これはまた、現代における国家間の緊張問題だけでなく、日常のビジネス現場でも大いに参考になる。(全3話中第1話)
時間:13分13秒
収録日:2020年1月24日
追加日:2020年8月26日
カテゴリー:
≪全文≫

●戦いの後の明暗を分ける無傷で勝つことの意味


 孫子の3篇目は、謀攻篇です。これは、謀略を攻めるということであり、逆に戦わずして勝つということの本旨を言っているところで、非常に重要なところです。

 まず、「孫子曰く、凡そ兵を用ふるの法、國を全うするを上と爲し、國を破るは之に次ぐ」ということです。これは何のことを言っているのかというと、戦争になったらお互いに傷つきますが、その戦場が自国の中であれば、戦火にすべてが破壊されてしまうようなことは良くないと言っているわけです。ここでもまた、戦わずして勝つという精神が説かれているわけです。それは何なのか、なぜいけないのかということです。

 これは、非常に重要なことです。例えば、戦争に勝ったとするとどうなるのかですが、戦争に勝ったわけですから、その領土というものは自国の領土になるわけです。そうすると、先ほどまで戦争して自分たちが徹底的に破壊した、もう瓦礫の山というそのような地域が自国になってしまうわけです。そして自国になった瞬間に、今度は戦後の復興というものを考えなければいけないという、そういう政治の対象になるということです。つまり、勝った瞬間に敵地が領土になり、領土になれば戦後の復興にものすごいお金が必要になるということで、それは勝ったと喜んでいいのかどうかということになるわけです。

 したがって、全うするというのは、無傷でということなのです。ですから、勝つとするにしても、無傷で勝っていくということが重要なのです。要するに、勝つためには戦わなければいけませんが、できるだけ損傷を浅くして勝つということが重要であると、ここで言っているのです。

 さらに今度は、単位が国から軍で、「軍を全うするを上と爲し、軍を破るは之に次ぐ」というようにして、これから「旅を全うするを上と爲し、旅を破るは之に次ぐ。卒を全うするを上と爲し、卒を破るは之に次ぐ。伍を全うするを上と爲し、伍を破るは之に次ぐ」となっていきます。これは「伍」という、5人編成が軍の最小単位ですが、この「伍」という5人編成が5つ集まったものを「両」といいます。この「両」が4つ集まったものが「卒」であり、ここで100人になります。それから、その「卒」が5つ集まったのが「旅」であり、ここで500人にな...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
日本文化を学び直す(1)忘れてはいけない縄文文化
日本の根源はダイナミックでエネルギッシュな縄文文化
田口佳史
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
学びとは何か、教養とは何か
教養の基本は「世界史」と「古典」
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
AI時代と人間の再定義(4)自分と出会うチャンス
人生はエネルゲイア――AIにない「自分と出会うチャンス」
中島隆博
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
これからの社会・経済の構造変化(2)経済的利益と社会課題解決の両立へ
利益か社会課題解決か…かつての日本企業の美点を取り戻せ
柳川範之
独裁の世界史~未来への提言編(1)国家の三つの要素
未来を洞察するために「独裁・共和政・民主政」の循環を学べ
本村凌二
「進化」への誤解…本当は何か?(9)AI時代の人間と科学の関係
科学は嫌われる!? なぜ「物語」のほうが重要視されるのか
長谷川眞理子
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ