『孫子』を読む:謀攻篇
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戦わずして勝つためには「知恵の勝負」へ持ち込むことが重要
『孫子』を読む:謀攻篇(2)無謀な戦いをしないために
田口佳史(東洋思想研究家)
戦場は常に緊張感に覆われているものだが、それに耐えきれず無謀な戦いに出てしまえば敗北を招くだけである。ビジネスという戦場においても、無謀な行動に出ればライバル企業に蹴落とされ、慎重で緻密な戦略を展開することが大切だ。そこで重要な戦略は、戦力、財力など全てにおいて、初めに相手を圧倒することである。(全3話中第2話)
時間:11分54秒
収録日:2020年1月24日
追加日:2020年9月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●緊張感がなくなった瞬間に敵にやられる


 さて、なぜ城を攻めるのが下であり、一番悪いことなのかということをその次で言っています。

 「攻城の法」は、城を攻めるやり方ですが、「已むを得ざるが爲」というように、しょうがないのでやるくらいのものであって、要するにやってはいけないということを言っているのです。それから、「櫓<ろ>ふんうんを修め」ですが、「櫓」というのは大型の盾であって、この大型の盾を持って城を攻めることです。これは何を言っているのでしょうか。「ふんうん」というのは運搬車で、盾と運搬を修めるというのですが、「器械を具ふ」と続きます。実は城攻めの最大のポイントは城壁です。城壁の上に敵兵がいて上から下に向かって攻撃してくるわけです。例えば、今われわれが城を攻めようとするときには、当然われわれは下にいて、敵は上から攻めてくるわけですから、ものすごく戦いにくいわけです。

 したがって、城を攻めようというときは、その城壁の高さまで土を盛るわけです。しかし、敵はそう簡単に土などは盛らせてくれませんから、結局、櫓、つまり大型の盾で敵の攻撃を防ぎながら、この「ふんうん」で土砂を運んでそこに機械を備えるのです。要するに、その高さまで土を盛っていくということをやらなければいけないわけです。そうしなければ、簡単に城などは落とせないわけです。それだけの期間だけで3カ月です。「三月にして後に成る」というのは、3カ月かかると言っているわけです。

 次は「距いん又三月にして後に已む」です。「距いん」というのは土を積むことなのですが、要するに準備に3カ月、それから土を盛るのに3カ月、つまり、これで半年かかってしまうわけです。では、半年間兵士は何をしているのかというと、両方やらなければいけません。敵の攻撃に対してこちらも応戦しなければならないし、土を盛る作業もしなければいけないのです。

 したがって、「將其の忿<いかり>に勝<た>へずして」となります。この場合の怒りというのは緊張感です。要するに、戦場にいるわけですから、緊張感がなくなった瞬間にやられてしまうので、いつも緊張感を持ってやっていかなければいけないのですが、半年間も毎日緊張していろと言われるわけですから、それはもうたまらないということにな...

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