●新たなジョブをつくれなかった国は衰える。
―― さまざまなことが効率的になっていく2050年には、雇用は拡大していると思いますか、それとも縮小していると思いますか? それから、人口は今後、減少していくと考えられていますが、貧富の差、経済格差は拡大していくと思いますか、縮小していくと思いますか?
小宮山 君の質問の中身は、ものすごく大事なポイントです。「どうなると思うか」というよりは、むしろ「そのためにどのような努力をするか」を考えるべきかもしれません。極論すると、昔は100人が農業をしていたとすると、今は100人に1人、もっと正確に言うと200人に1人、農業をすればよい世の中です。それはつまり、農業だけしか仕事がなかったら、99人がジョブを失うということでもあります。君の質問はそのような意味で本当に的を射ています。雇用の問題を放っておいたら大変です。
次にものづくりの時代が来ました。だんだんと工業が発達してきて、一時は工業が雇用をつくる世の中になりましたが、それもどんどん減ってきています。企業や社会は、100台の自動車を今まで10人でつくっていた仕組みを、何とか5人でつくれるようにしようとします。これが経済でいう「生産性を上げる」ということです。そうすると結局雇用が減ってきて、今では日本でも製造業の雇用が20パーセントを割りました。では、残りの8割は失業しているかというと、そうではありません。サービス業をやっています。
「雇用をどうするか」は、おそらく僕たちが一番考えていることです。簡単ではありません。例えば、未来学者などと話すと、今年生まれた人、君たちよりも10数歳下の人の3分の2は、今は存在しない職業に就くだろう、と言われています。
これからなぜ雇用が重要かというと、雇用がお金だけに関係するわけではないからです。最初に君たちへの歓迎の言葉の中で、「人間は社会的動物だから、人と話してください」と言いましたけれども、雇用は、まさに普通の人間が社会と接点を持つときに、誰でもできる一番良い方法なのです。
器用な人はNPOを立ち上げたり、社会との接点をいろいろとつくっていけるかもしれないけれど、僕たち全員がそんなことをできるわけではありません。雇用、ジョブを持つことが社会的接点をつくる一番良い方法ですから、何とか新たな雇用をつくっていく必要が...