●三島や太宰を知らない「次世代を担う」日本の政治家たち
―― そういう意味で、先生がよく言われる明治国家は、それ(国家のために自分が何ができるか)が言えました。日清戦争も日露戦争もそうです。
執行 アメリカもケネディまでは、そうです。ジョン・F・ケネディ の有名な演説、「これからアメリカ人は国から何をしてもらえるかではなく、国のために何ができるかを一人一人が考えろ(Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country)」。
―― 偉大な民主主義国家だった時代のアメリカです。
執行 まだ、そうです。あれを言って選挙に受かったのだから、アメリカはまだ偉大だったのです。
―― しかもアイルランド系で、カソリックで。
執行 だから本当は、身分が非常に低い。ケネディのあの有名な演説を、僕は今でもたまにビデオで聴きますが、あれが言えるのは、まだ素晴らしいアメリカだったと思います。あれを今、日本の政治家で言える人がいるのか。「日本国家におまえは何ができるのか」と。僕は会った人みんなに言っていますから、もう大体嫌われています(笑)。嬉しいですよ、僕は嫌われるのが大好きだから。これは「テンミニッツTV」を見ている人にも、みんなわかってもらいたい(笑)。
―― でも何の効果もなくばらまき続けると、必ずどこかで破綻が来ます。破綻が来て初めて、次の段階に入る。今いる人たちは到底リーダーになれないから、新しい人たちが出てくるでしょう。
執行 これは、(新しい人は)来ません。新しい人が出てくるには、もともと、わかっていなければダメです。「わからない人がやってみて、破綻したから次」というのはない。これは歴史を見ればわかります。『万葉集』まで含めて日本の歴史を見たとき、やはり残っているのは、ある人が若いときから国の将来を憂えて、ずっと努力してやってきたものです。
―― かなり長い時間の努力の持続が必要なのですね。
執行 僕が歴史を研究すると、1人の人間が必ず「自分の人生と命」を投げ捨てています。そういうもの以外は残っていないのです。だから、これからは何も残りません。みんな、(命を投げ捨てるようなことは)しないのですから。政治家も、ついこのあいだまでは命を投げ捨てていました。
―― テロに遭いますから。
執行 テロに遭うのを覚悟でやっていた。実業家もそうで...