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幕末維新の英傑たちは、皆、生命を捧げた人たちだった

「壁」ありてこそ(7)命を投げ捨てる覚悟はあるか

情報・テキスト
偉大な民主主義国家だった時代のアメリカは、「国のために何ができるかを考えろ」と言ったケネディが当選できた。今の日本に、それを言える政治家がいるのか。王岐山が、日本の若手政治家たちに三島由紀夫や太宰治のことを聞いたら、誰もまともに答えられなかったという。日本人は、なぜここまで劣化してしまったのか。国を立て直せるのは、若いときから国の将来を憂い、命を捨てる覚悟で努力してきた人だけである。幕末維新の英傑たちも、あるいは昭和期までの政治家や実業家も、国家のために命をなげうつ覚悟を持っていた。だが今は、本当に国を憂いている人は偉くなれない社会である。教養がなく面白みのない人だけが出世している。こんな社会がダメになるのを防ぐ方法はない。考えるべきは、落ちたあと、どう立ち直るかである。(全8話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:14:05
収録日:2021/01/14
追加日:2021/04/02
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≪全文≫

●三島や太宰を知らない「次世代を担う」日本の政治家たち


―― そういう意味で、先生がよく言われる明治国家は、それ(国家のために自分が何ができるか)が言えました。日清戦争日露戦争もそうです。

執行 アメリカもケネディまでは、そうです。ジョン・F・ケネディ の有名な演説、「これからアメリカ人は国から何をしてもらえるかではなく、国のために何ができるかを一人一人が考えろ(Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country)」。

―― 偉大な民主主義国家だった時代のアメリカです。

執行 まだ、そうです。あれを言って選挙に受かったのだから、アメリカはまだ偉大だったのです。

―― しかもアイルランド系で、カソリックで。

執行 だから本当は、身分が非常に低い。ケネディのあの有名な演説を、僕は今でもたまにビデオで聴きますが、あれが言えるのは、まだ素晴らしいアメリカだったと思います。あれを今、日本の政治家で言える人がいるのか。「日本国家におまえは何ができるのか」と。僕は会った人みんなに言っていますから、もう大体嫌われています(笑)。嬉しいですよ、僕は嫌われるのが大好きだから。これは「テンミニッツTV」を見ている人にも、みんなわかってもらいたい(笑)。

―― でも何の効果もなくばらまき続けると、必ずどこかで破綻が来ます。破綻が来て初めて、次の段階に入る。今いる人たちは到底リーダーになれないから、新しい人たちが出てくるでしょう。

執行 これは、(新しい人は)来ません。新しい人が出てくるには、もともと、わかっていなければダメです。「わからない人がやってみて、破綻したから次」というのはない。これは歴史を見ればわかります。『万葉集』まで含めて日本の歴史を見たとき、やはり残っているのは、ある人が若いときから国の将来を憂えて、ずっと努力してやってきたものです。

―― かなり長い時間の努力の持続が必要なのですね。

執行 僕が歴史を研究すると、1人の人間が必ず「自分の人生と命」を投げ捨てています。そういうもの以外は残っていないのです。だから、これからは何も残りません。みんな、(命を投げ捨てるようなことは)しないのですから。政治家も、ついこのあいだまでは命を投げ捨てていました。

―― テロに遭いますから。

執行 テロに遭うのを覚悟でやっていた。実業家もそうです。(三井財閥総統の)團琢磨だって、血盟団に殺されています。そんなことが怖くて、国家事業なんかできません。僕にしても、そんなことが怖かったら何も喋れません。僕はどんな不幸が襲ってこようが、誰がどうしようが、何も怖くないから喋れるのです。殺したい人がいたら、いつでもどうぞと言っています。「あ、どうぞ、どうぞ、殺してください」と。

―― でも今みたいな状況で大事なのは、そういうことですよね。丸く、オブラートに包んだ部分では、絶対、人に感化を与えません。

執行 絶対ダメです。次に行きません。

―― リスクのない言葉を選んでいくと。

執行 リスクは、わざと取らなければダメです。そのリスクが物事を揺らすのです。物事は、揺れることで出ていくのです。

―― でもだんだん、その段階に入っていきます。「みんなにとって、いいばらまき」をやっているうちに、結果的に破綻して、ある日突然ガソリンの値段が2倍になり、自分たちが食えなくなる。今は撒いているから実体経済とは別に食えていますが、これは長続きしません。気がついたら韓国や台湾や中国の人よりも、はるかに貧しくなる。多分このへんでしょうね、気がついてくるのは。

執行 そうですね。私はもう日本は滅びると思っていますから。何度も言いますが、希望的観測はないのです。だから、私がやっている事業は、それからすべて書いている本も、集めている芸術も、滅びたあとで、魂が残っている人がどう立ち上がるかを考えてのものなのです。私が多分会うこともない、将来の人たちのために、今やっているのです。

―― 感化を与える。そして、魂の継承は今や、芸術をもってしかできないと。

執行 もう、宗教が死にましたからね。宗教と天皇制が死ねば、もう芸術しか残っていない。芸術はまだ、芸術のためには命を捧げる人がいる。たとえば、身を割いて芸術作品を買う人もいます。自分の食べ物を削ってでも芸術作品が欲しいなどということですが、この気持ちが大切なのです。そういうものは、もう芸術しかないわけです。自分の食べ物を削って買えば、それを書いた人の魂は、その人に乗り移ってくるというのが、私が人生で経験したことです。

―― 乗り移っていくんですね。確かに、三島(由紀夫)の50年式典をやったおかげで、感化を受ける人たちが出てきますね。

 2019年に今の中国の国家副主席で、前財務大臣だった王岐山 が、...
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