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「本物の芸術作品」には、作者のすべてが入っている

「壁」ありてこそ(6)作品の中に生きつづける魂

概要・テキスト
価値のあるものを残しておけば、何百年経とうが、才能のある人がその魂を受け取ってくれる。そう思って魂の芸術を集めている。優れた芸術には、作者自身の人となりがすべて入っている。だから『万葉集』を読めば当時の人と会話もできる。この考えは一種の高慢だが、高慢は気概でもある。気概にはいい面もあれば悪い面もある。いいところ取りをしたい戦後は、この気概を潰してしまった。自分が国家のために何ができるのか。愛する人のために何ができるのか。好きな芸術家のために何ができるのか。それを考えるのが人生なのだ。(全8話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:12:56
収録日:2021/01/14
追加日:2021/03/26
カテゴリー:
≪全文≫

●三島由紀夫の「魂」の書を見れば、その死は驚きではない


執行 私が言いたいのは、「『万葉集』が残っていたから、私は古代人と対話ができるようになった」ということです。私はそれを絵や書物といった「将来に残すもの」で、もう1回やりたいのです。『万葉集』と同じように、価値のあるものを残しておけば、それこそ1000年経とうが500年経とうが、才能のある人がそれを読めば、その魂を受けてくれます。

 たとえば、戸嶋靖昌という人間が、戦後の飽食の誰もが魂を失った時代に、芸術にすべての魂を捧げて、無名のまんま死んでいった。その魂を受けてくれる人が300年後にいると思っています。それが真の愛国心だと思っています。それで私は、魂の芸術を集めているのです。戸嶋靖昌が代表で、ほかにもそういう可能性がある作家を全部集めています。

―― 先生、すごいと思いますよね。その力ですよね。

執行 これは、いろいろな芸術家を見る中で、戸嶋に限らず本当に芸術に身を捧げた人は、みんなそれがあります。「芸術作品」と言われるような優れた文学もそうで、当然、三島由紀夫も入ります。そういうものは何千年経とうが、書いたときのその人の気持ちが行間から滲みます。だから文学に関しては、私は全部わかります。これは「テンミニッツTV」を聞いてる人に、わかってほしい。

 だから私は自分が好きな文学を読むときも、現代人が好きなプロフィールを一切読みません。まず文学を読んで、「この人はこういう人で、ああいう人で……」と全部まず自分で予言するのです。社員にも話しますが、あとから調べて外れたことはほとんどありません。全部当たっています。そのくらい芸術というのは、芸術の中にその人が入っているのです。あとは、それが読めるようになるかどうかです。それは、見る人がそれに捧げているかです。私は文学に命を捧げていますから。文学を読んだまま死のうと、ずっと今でも思っています。

直近だと正月休み、トイレとほんのちょっとした食事時間以外、ずっと竹本(忠雄)先生の本を読んでいました。竹本先生と知り合って、竹本先生の膨大な著作を知ったので、それを死ぬほど読みました。1日中同じ姿勢のまま、5日間まったく動かない。外にも出ない、歩きもしない。もうほとんど最小限の睡眠だけで読んでいました、70歳で。つまり何が言いたいかというと、命懸けなのてす。

 私は竹本先生と...
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