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天皇こそが「日本人のアイデンティティ」の核心だった

「壁」ありてこそ(2)天皇に対する「畏怖」

概要・テキスト
執行草舟が子どもだった頃、深く感銘を覚えたのは。当時の日本人たちの「天皇に対する心」であった。共産党員でも西洋かぶれの人でも、天皇の名前を聞けば直立不動になった。天皇に対する尊崇が、日本人の良さを作っていたのである。哲学者の森有正が、サルトルやカミュらとフランス語で対等に議論を交わせたのも、自分の中に「天皇」という根っこがあったからではなかったか。だが今、天皇にそうした思いを抱く日本人はいなくなってしまった。もちろん天皇を「好き」ではあっても、「本当に愛している」と言えるか。(全8話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:11:44
収録日:2021/01/14
追加日:2021/02/26
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≪全文≫

●昭和の時代までは、天皇に対する畏れや尊崇があった


執行 そのとき日本人を支えていたのは何か。「武士道」は失われているけれど、私は子ども心に当時の日本人を偉いと思ったのは「天皇に対する心」です。

 変な話ですが、子どもの頃、うちの近所に共産党の幹部が住んでいました。理論的には天皇を批判しているのですが、天皇陛下がたとえば、そばを通ったとすると、みんな直立不動になるのです。これが日本人だと、私は思うのです。当時はそれが残っていたということです。

 共産党員だろうと、アメリカナイズしている人だろうと、ヨーロッパかぶれだろうと、全員に天皇陛下に対する気持ちが残っていた。すでに武士道は失われていたけれども。

 その天皇陛下に対する気持ちとは、古い言葉で言えば、日本の「国体」です。「日本の心とは何か」「日本人の原点とは何か」という問いかけだと私は思います。この問いかけが、私が子どもの頃までの偉い人には、それを実践するかしないかは別として、悩みとして、問いかけとして、心に残っていたのです。

 だから小林秀雄にしても、みんな持っていました。私は小林秀雄とも知り合いで、当時「評論の帝王」と言われていましたが、私が大学生の頃に、何度もうちにも遊びに来ました。私も文学論や音楽論など、いろいろな話をしました。小林秀雄も、何というのか「書生」なのです。

―― なるほど、書生なんですか。

執行「大先生」と思い込んでいると大間違いです。自分の人生の悩みに、最後までぶつかっていました。つまりは「書生」です。

―― 葛藤しているわけですね。

執行 「日本最大の知性」と言われた小林秀雄でも、そうだった。もちろん三島由紀夫もそうです。だから切腹したわけです。あれだけ名声を得て、あれだけ有名になっても、どうしても逃れられない魂の葛藤を持っていた。その中心に何があるか。

 村松剛、森有正、小林秀雄、三島由紀夫といった名のある人だけでなく、名のない職人といった人も私はたくさん知っていますが、みんなに共通してるのは「天皇」です。

―― その時代は、やはり天皇陛下なんですね。

執行 天皇陛下に対する尊崇です。これがすべての日本人の良さを出している。私が子どもの頃までは、そうでした。それが私が30歳を過ぎて、現在は70歳ですが、まるでなくなっています。

―― 確かにそうですね。

執行 天...
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