知足の政治家・保科正之に学ぶ
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
会津藩藩祖・保科正之はどんな人物か?その功績は?
知足の政治家・保科正之に学ぶ(2)転換期の名舵取り役
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
「ならぬことはならぬものです」。2013年NHK大河ドラマ『八重の桜』でおなじみ、会津藩「什の掟」である。その会津藩の藩祖・保科正之を「現代人が学ぶべき政治家」と推すのが山内昌之氏だ。将軍お膝元の江戸にも、国元の会津にも平和の時代を築いた保科正之の功績とは? (後編)
時間:15分48秒
収録日:2014年9月3日
追加日:2014年11月23日
≪全文≫

●平和な時代をリードする保科正之の「民政」感覚


 保科正之が明暦の大火で示した感覚は、なぜ生まれたのでしょうか。彼は3代将軍・家光から4代将軍・家綱の時代にかけて生き、政治の責任を担っていました。この時代は、ちょうど徳川が武断政治から文治政治へ、軍事中心の古い体制から平時の体制へと大きく切り替わる時期でした。すなわち平和の時代において、「民政」を重視しなければいけない時代に入ったといえます。

しかし、戦国の名残をとどめた老中や重臣たちもまだ周囲にはいたのです。例えば保科正之は、玉川上水をつくった最大の功績者の一人です。ところが、彼が「玉川上水をつくる」と言い出した時、彦根藩の藩主で大老を務めていた井伊直孝は、「そういうものをつくると、幕府に反旗を翻した大名や敵が、上水を通ってすぐにこの江戸に入り込むことになりかねず、危険だ」と反対しました。これは、すこぶる戦国的な発想です。

 平和の時代においてまず問題になるのは、江戸の1万軒に安心できる水をどのように供給するかです。江戸は人口過剰な町ですから、現在の東京の基礎になる江戸の繁栄を支えていくためには、健全な水の供給が重要でした。上水道と下水道の管理をどうするかを正之は考えたのですが、「それでは、戦(いくさ)の際に不利になる」と発想する方が、当時としては普通でした。しかし、正之はそうではなくて、「民政」というものを意識しないと駄目だと考えます。


●江戸城に天守閣がない理由


 前回、明暦の大火の際に天守閣が焼けて燃え尽きたと言いましたが、これを再建しなければいけないという議が起きた時、正之は「こうしたものに費やすお金をもって、他の復興計画に充当するべきだ」と反対します。天守閣をつくっても、もはや戦時においてすら、そうしたものが機能するかどうか疑わしいと考えたのでしょう。このような考えは、実際に近世から近代にかけての軍事的な哲学を先取りしていたものです。

 天守閣には象徴的な意味はあっても、そこを使って敵に対して攻撃する意味はありません。むしろ守る側に立ったときに、天守閣は大砲等々の発射を受け、火力によって落とされることになり、非常に具合が悪いのです。

 これは非常に皮肉なことですが、幕末の戊辰戦争の時に、会津若松城(鶴ヶ城)における天守閣の象徴的な焼亡により、白虎隊の若者たちは「天守閣が焼け落ちた」...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(1)はじめに
新史料の発見で見直される「本能寺の変」
藤田達生
天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【テンミニッツで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(7)若者の引きこもりと日本の教育問題
日本の引きこもりの深い根源…「核家族」構造の問題とは?
與那覇潤
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(2)ノイズと半身社会の処方箋
ノイズを楽しむ――半身社会の「読書と教養のすすめ」
三宅香帆
「同盟の真髄」と日米関係の行方(7)トランプ氏の評価とその実像
こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は
杉山晋輔
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(7)日本の倫理こそ未来の理想
他人の幸福実現に喜びを見出す日本の道徳こそ未来の理想だ
賴住光子
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(14)ポリスと魂の堕落過程〈下〉僭主の末路
僭主制は欲望の奴隷…過度の自由が過度の隷属に転換する
納富信留
新撰組と幕末日本の「真実」(6)新撰組結成と清河八郎、芹沢鴨
清河八郎と芹沢鴨…乱闘事件や大和屋焼討事件の真相とは?
堀口茉純