現代中国の儒教復興
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
中国にはかつて「孔子教」をつくろうと考えた思想家がいた
現代中国の儒教復興(3)儒教は宗教なのか
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
「儒教は宗教なのか」という問いは、非常に難しい問いである。果たして儒教は宗教なのか。宗教にはどのような問題があるのか。中国と日本における儒教の宗教化の動きとともに、中島隆博氏がこの問いに迫る。(全4話中第3話目)
時間:18分20秒
収録日:2014年9月9日
追加日:2014年11月26日
カテゴリー:
≪全文≫

●東アジアには「レリジョン」に相当するものがなく、日本で「宗教」と翻訳


 では、再びお話をしたいと思います。儒教に関しての議論をもう一度続けてみたいと思うのですが、「儒教は宗教なのか」という問いを少し手がかりにしてみたいと思います。

 多くの方々は、「いや、儒教はやはり宗教ではない」とお考えだろうと思うのです。なぜならば、宗教としてイメージされるのは、多くの場合、キリスト教だと思うからです。儒教には、キリスト教のバイブルにあたる経書はありますが、例えば教会や、あるいは信仰箇条を欠いているので、宗教ではなく、やはり哲学、思想、倫理といったものなのではないか、という議論がなされるかと思います。ただ、これは、実はなかなか難しい問いなのです。といいますのも、宗教というもの自体が問題含みだからです。

 近代の東アジアが直面したもの、それは「キリスト教に代表されるレリジョンをどのように翻訳し受け入れるか」ということだったと思うのです。それに相当するものはなく、翻訳語として最終的に「宗教」になっていきます。

 これは、日本で翻訳されて、逆に中国、あるいは、韓国の方に広がっていったのですが、他にもいろいろな可能性はあったのです。


●中国と日本のキリスト教との関わり


 そのレリジョンとしての宗教に対して、それまでのさまざまな「教え」があります。儒教は儒の教えです。道教は道の教え、あるいは、仏教は仏の教えなのです。それらの教えと宗教とは一体何が違うのか。これが当然問われていくのです。

 難しいのは、キリスト教といっても、そこでイメージされていたのは、プロテスタンティズムだったのです。カトリックに関しては、日本も中国もすでに17世紀に経験をしていたので、ある仕方で理解できていたのです。

例えば、中国の場合ですと、イエズス会のマテオ・リッチとの交遊や、あるいは、彼の『天主実義』という非常に見事な書物の理解を通じて、カトリックはある程度の理解を得ていました。日本の場合でも、例えば、不干斎巴鼻庵(ふかんさいはびあん)の議論がありますように、カトリックは何となく分かっていたのです。

 ところが、プロテスタンティズムは、全然違う形態をとっていました。なぜならば、それはビリーフ(信仰)、すなわち「神を信じるということは内面の問題である」と考えたからです。「私と神が内...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
『「甘え」の構造』と現代日本(2)日本人の自責意識と自由の限界
「Thank you」か「I am sorry」か…日本人の癖とは?
與那覇潤
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生