現代中国の儒教復興
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
北京オリンピックの「開幕式」で見せた儒教的概念の復活
現代中国の儒教復興(1)国家のレジティマシーと儒教
哲学と生き方
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
戦後、儒教に対する関心が急速に薄れた日本とは対照的に、今、中国では儒教復興現象が広まっている。そこには、中国政府が新しいフェーズに入るにあたって儒教を必要とした背景がある。その背景とこれからの課題を、東京大学東洋文化研究所教授・中島隆博氏が明確に解説する。(全4話中第1話目)
時間:14分16秒
収録日:2014年9月9日
追加日:2014年11月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●中国で急速に広まっている儒教の復興現象


 こんにちは。東京大学の中島でございます。今日は儒教についてお話をしたいと思います。

 まず、皆さんが儒教に対してどのようなイメージをお持ちか、うかがってみたいと思うのですが、多くの方々は、「儒教はもう過去の思想的な遺産である」とお考えかもしれません。確かに今、日本の学校教育の中で儒教について学ぶことはほとんどありませんし、あるいは、儒教の儀礼に皆さんが触れる機会もほとんどないかと思います。

 では、日本以外の地域では儒教はどうなっているか、少し考えてみたいと思います。

 今、中国、大陸の方の中国ですが、実は儒教の復興現象が大変な勢いで広まっています。日本とは全く違う状況です。なぜそのようなことが起きているのか、少し考えてみたいと思います。

 実は、近代中国は儒教を150年間にわたって抑圧してきました。なぜならば、「儒教は中国の後進性を象徴する考え方であり、封建的な思想である」「近代化にとって全く役に立たない、あるいは近代化を阻害する要因である」と考えたからです。そのために、儒教は周縁化され、抑圧されてきたという歴史を持っています。

 ところが、1980年代ぐらいからでしょうか、徐々に儒教復興という現象が始まり、今では儒教に関して大変な流行が起こっているという現状があります。


●中国と対照的な日本―近代化に儒教を利用しつつも、戦後、関心は薄れる


 もう一度、日本の話に戻りましょう。日本の場合、特に戦後においては、儒教に対する関心が急速に薄れていきます。しかし、振り返ってみますと、日本の近代は、中国と異なり、儒教を大変うまく利用した時代であったと言うことができます。中国とは対照的なのです。

 一方で、「近代化のために儒教を排除していく」というのが、中国の採った道でした。それに対して、日本は「近代化のために儒教を利用していく」という、大きな違いを持っています。

 ところが、それが今は逆転しているのです。日本は儒教を一切考慮しない社会を戦後においてつくってきました。しかし、中国は今、もう一度儒教を考え直そうとしているのです。


●中国の儒教復活の背景にある一つの概念―「和」


 一体、これにはどのような背景にあるのか、少し考えてみたいと思います。

 北京オリンピックを覚えている方はいらっしゃいますで...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験
鎌田東二
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子