徳川将軍と御三家――紀州藩と尾張藩
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ徳川御三家筆頭の尾張徳川家から将軍が出なかったのか
徳川将軍と御三家――紀州藩と尾張藩(1)尾張徳川家が選ばれなかった理由
歴史と社会
徳川秀忠から続く系譜が7代家継で切れたのち、御三家の中から紀州徳川家の吉宗が8代将軍に迎えられた。なぜ御三家筆頭だった尾張徳川家ではなく、紀州徳川家から選ばれたのか。尾張が避けられた要因に迫る。(全2話中1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:13分15秒
収録日:2020年1月14日
追加日:2021年12月4日
≪全文≫

●徳川家康からの血が近かった徳川吉宗


山内 徳川家康と徳川吉宗の関係ですが、これがなかなか面白い。吉宗はなぜ8代将軍に継いだのかという問題に関わってきます。

 7代将軍・徳川家継が幼くして亡くなったので、吉宗編の1話目でもお話ししましたが、そこで徳川秀忠から続く血が絶えました。その結果、秀忠、家光から続いてきた徳川の嫡統が維持できなくなりました。

 実際は、4代将軍・徳川家綱までは嫡統できたのですが、家綱が死んだ後、彼には子どもがいなかったので、弟が後継となったのです。

 ここで一つ“ズレた”ということもいえるけれども、秀忠の血はつながり、家光の血もつながったということです。徳川綱吉の後に、綱吉と家綱の甥であり、甲府宰相である弟・綱重の息子だった綱豊が、6代将軍・家宣になりました。

 以後、家宣の息子・家継が継いだので、嫡統に戻ったという考え方をします。

―― なるほど。

山内 ですから、横道にそれたのは綱吉です。ですが、それが戻り、家宣と家継は父子で相続がなされたので、嫡統なのです。ところが、これが家継で途切れてしまったために、徳川の本家(宗家)をどうするか、ひいては征夷大将軍の血をどうするのかという問題が出てきました。

 「吉宗がなぜ将軍になったか」について、意外と皆が気づいていないことがあります。御三家には家康の血が入っており、本家で秀忠の血が途絶えたので、もう一度、家康にまでさかのぼろうと考えたのです。家康の晩年に生まれた子が、尾張の義直、紀州の頼宜、水戸の頼房の3人で、それぞれが後に御三家となります。御三家があったために、嫡統が途切れても、もう一回、将軍の血に戻すことができたのです。

 その際に、吉宗が有利だったのは、吉宗が家康の曾孫だったことです。家康の子どもが頼宜、その頼宜の息子が光貞で家康の孫となります。そして、光貞の子どもが吉宗なので、吉宗は家康の曾孫になります。

 ところが尾張家ですが、当主だった継友は家康の玄孫でした。ここが大事なところですが、尾張家は嫡統できたのですが、藩主の吉通の後、五郎太の時代になったとき、五郎太が将軍・家継よりも若い歳で死んでしまいました。おそらく毒殺だった可能性が高いのです。ここで嫡統が途絶えて、叔父の継友に戻るのです。

 本来であれば嫡統の系譜であり、しかも...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也

人気の講義ランキングTOP10
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎