徳川将軍と御三家――紀州藩と尾張藩
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
8代将軍となった徳川吉宗の勝因は大奥にあった
徳川将軍と御三家――紀州藩と尾張藩(2)藩主の器量と大奥の力
なぜ徳川吉宗が8代将軍となったのか。それは御三家の紀州徳川家と尾張徳川家の違い、ひいては藩主である吉宗と継友の器の違いにあった。さらには将軍決定に大きな影響力を及ぼす「大奥」「付家老」への対応方法にも迫る。(全2話中2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:14分20秒
収録日:2020年1月14日
追加日:2021年12月11日
≪全文≫

●大きな権力の源泉は大奥


山内 7代将軍・徳川家継が危篤になっていく際にも、紀州藩は段取りよく情報収集をしていました。藩主が吉宗なので、その点は抜かりがなかった。後に「御庭番(おにわばん)」の制度となるような諜報システムがあり、その情報収集班を江戸城の内外に張り巡らせていました。

 また、江戸城の中には、御三家による城詰めの「御連絡」というものがありました。それから、幕府から付けられた「付家老(つけがろう)」がいました。これは、尾張においては竹腰家と成瀬家、紀州においては安藤家と水野家、水戸は中山家でした。紀州藩においては、この付家老と城詰めの情報収集の能力と器は大きかったといわれています。

 尾張藩は、家継の病状が重篤で、まさに危篤の時にも暢気なものでした。付家老の一人・竹腰(山城守)が尾張に帰ろうとして、段取りをつけていた。幕府も将軍の危篤は秘中の秘なので外部には漏らさず、それを許したのです。ですが表面上は許したからといって、本当に帰るかという話です。実際に中仙道を経由して帰ろうとしたのですが、その寸前に家継が死んだので、さすがに竹腰は帰るのをやめました。

 紀州藩は、家継が亡くなる前後にきちんと情報収集をしているので、登城の命令が下ったときには真っ先に行列を整え、2人の家老が馬に乗り、堂々と隊を組んで、登城した、という話があります。

―― 情報収集力が全然違ったのですね。

山内 ところが尾張藩は、その知らせが来たときに何の備えもしていませんでした。行列を揃えるどころの段取りではなかった。どうなったかというと、継友は先ほど申したような器の人物なので、焦って馬を買い、単騎で江戸城に登っていきました。その後、バラバラに家中がついていったといいます。これではダメでしょう。

 このような紀州藩と尾張藩の統制力の違い、情報収集力の違い、藩主の器の違い、それから家康からの血の問題、こういったものが積み重なって、吉宗は将軍になっていきます。

 それをバックアップしてくれたのは、大奥の天英院という、家宣(6代将軍)の正夫人、それから、家宣の側室だった月光院が吉宗を推しました。月光院は亡くなった家継(7代将軍)の実母ですから、その彼女が強く推した。

 また天英院に戻りますが、この人も結局推すことになりました。彼女が吉宗を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫