徳川将軍と江戸幕府~家重、家治、家斉編
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
将軍継承の舞台裏…障害を持つ兄・徳川家重と弟・田安宗武
徳川将軍と江戸幕府~家重、家治、家斉編(2)将軍家のシステムと徳川吉宗の巧み
ハンディキャップを持つ兄・徳川家重と、有能であった弟・田安宗武。当然、周囲からは宗武を次期将軍にと推す声があった。父・徳川吉宗はそれをどのように考え、「次の将軍は家重に」という流れを作っていったのか。そのバックグラウンドとしてあったのは将軍家のシステムと、2つの吉宗を演じた父の巧みさだった。(全5話中2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:7分51秒
収録日:2020年12月14日
追加日:2022年1月22日
≪全文≫

●将軍家はシステムで運営していく


山内 もう1つ、徳川吉宗の人間としての素晴らしさがあると思います。吉宗は決して次のことを語ろうとはしませんでした。それは吉宗の、父として、それから人間としての感情です。いわばハンディキャップのある子どもに対する愛おしさと、そのような子を自分が生きている間にきちんと面倒見なければいけない、という思いです。

 優れた臣下や家臣たち(老中と側用人、御側御用取次といった人間)がいて、実際の政治を行っていくシステムをつくる。そして、聡明な田安宗武がいて、御三卿の元である田安家をつくる。その小次郎(宗武の幼名)がいて、兄を補佐すれば、きちんとした統治ができるだろう。つまり将軍家は、人間ではなくシステムで運営していくのだ――。

 そういう考えが吉宗にあったのではないでしょうか。ヒューマニティのある人間・吉宗と、非常に冷徹な将軍である政治家・吉宗の2つが巧みに出てきたというところが、家重が継承したバックグラウンドではないかと私は思っています。

―― 同じような例で、例えば明でいうと、永楽帝という次男が長男を滅ぼしていく。唐でいうと、第2代の李世民(太宗)がそうですね。ああいったことが起こると家が乱れるということを、家康にしても吉宗にしても、よく知っていたのでしょうか。

山内 彼らは歴史をよく学んでいますからね。唐の李世民(太宗)の例が出たけれど、まさにそうです。あまりに優れた弟が生まれると、上の凡庸な兄、あるいは平凡な兄たちはかすみます。かすむだけではなく、優れた弟が「自分が統治したほうがいい」となっていく。実際、結果として太宗の政治は「貞観の治」といって素晴らしいのですが、始まりは「玄武門の変」でした。

―― そうですね。玄武門の変です。

山内 兄たち2人を殺し、父・李淵に対して「自分を後継者として皇帝に」と要請しているわけです。それが皇帝継承のあり方としていいかどうかは、また別問題ですね。

 実際、田安宗武の場合も、そういう話はあったと思います。老中の松平乗邑左近衛将監乗邑は非常に優れた政治家だったけれども、吉宗の意思に反して「徳川家重ではなくて宗武を将軍に」という考えでした。どうやら吉宗にもそのように言ったらしい。そうすると吉宗が、それに対して不快感を持ったという話があります。


●徳川家重を後継にするための情報加工力


山...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保