徳川将軍と江戸幕府~家重、家治、家斉編
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
将軍継承の舞台裏…障害を持つ兄・徳川家重と弟・田安宗武
第2話へ進む
徳川吉宗が障害を持った家重を9代将軍に指名した理由
徳川将軍と江戸幕府~家重、家治、家斉編(1)徳川吉宗の後継問題
8代将軍・徳川吉宗は長男の家重を後継に指名した。しかし家重は、生まれながらに言語障害を持っており、さらに弟の宗武のほうが優秀だといわれていた。にもかかわらず、なぜ吉宗は家重を後継としたのだろうか。(全5話中1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:9分07秒
収録日:2020年12月14日
追加日:2022年1月15日
≪全文≫

●9代将軍に指名された徳川家重は言語障害と頻尿症だった


―― 今日は徳川家重(9代将軍)の話をお聞きしたいと思います。家重の在職期間は、1745年から1760年です。

 まず山内先生にお聞きしたいのは、吉宗ほどの人が、なぜ言語障害があったともいわれている家重を後継に指名したのかという問題です。私の考えるところでは、その次の孫である家治(10代将軍)は非常に英明な君主であり、吉宗自らが育てました。そのため、家重が将軍の間は自分(吉宗)がサポートできるという考えで、そのようにしたのではないか。そのあたりの背景を、ぜひお聞かせいただければと思います。

山内 この問題には、「徳川将軍家」を知るときの非常に大事なポイントが含まれています。武家方での相続は、正嫡(正室から生まれた男子)が絶対です。厄介なのは、側室から先に男子が生まれて、しばらくして正室に男子が生まれるケースです。

 分かりやすくいうと、吉宗の場合はまずこの正嫡を重んじました(編注:ただ実際に正嫡はいなかった)。そして、先に生まれた男子が家重だったのです。対する宗武は、いかに聡明であっても、後から生まれた男子です。これが決定的に大きなことなのです。吉宗は正室を後から娶るわけで、最初は紀州にいた時に娶った側室がいました。この側室から生まれたのが家重です。

 その家重は、生まれながらに言語に障害がありました。これについて、アレクサンドル・プラーソルというロシア人の学者が面白いことを言っています。彼は家重を、(ロシア語を直訳的に訳すならば)「音節がよく分節せず、はっきり聞き取れない言語活動をする人」と言っています。きちんと音節が分節化しないというのは、はっきりと音節(音)を発音できないということです。だから曖昧になってしまう。言語的表現において障害があることを、言語学的にややくどい言い方をしているのです。

 それから2つ目として、彼は頻尿に苦しんだ人でした。

―― そうなのですか。

山内 プラーソルは『徳川の将軍たち』という本を書いているのですが、その中の家重の話は興味深い。当時、駕籠で鹵簿(ろぼ)を組んでも、およそ1時間から1時間半で、江戸城から上野の寛永寺まで行くことができました。その距離はおよそ5キロメートルだといいます。プラーソルは、「そこまで臨時に23カ所、小便所(お手洗い)を設けた」と書いている。

 ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子