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真に優れた芸術は「汚い色」が「綺麗な色」になる

憂国の芸術(6)泥水を描いて「蓮の花」になる

概要・テキスト
洋画家 戸嶋靖昌は「優れた芸術は、汚い色が綺麗な色になる」と言った。同じことはコシノジュンコ氏の絵にも言える。まさに泥水を描いているように見えて「蓮の花」が現われてくるのが、真の芸術家なのである。ところで、芸術作品に「恋」をした偉人がいる。有名な江戸期の国学者・本居宣長である。本居宣長が『古事記』や『源氏物語』を解釈してくれたおかげで、明治期以降のわれわれもそれらを読み解くことができるのだが、その本居宣長は、今、正式に「国文学者」としては認められていない。それは本居宣長が「偏っている」と評価されているからである。だが本居宣長は、偏るほどに「恋をした」からこそ、偉業を成し遂げることができたのだ。(全9話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:09:53
収録日:2021/12/02
追加日:2022/02/18
カテゴリー:
≪全文≫

●汚い色が綺麗にならなければ、芸術ではない


執行 これは洋画家、戸嶋靖昌も言っていました。「優れた芸術というものは、汚い色が綺麗な色になる」と。

―― 面白いですね。

執行 これは戸嶋の言葉です。汚い色が綺麗にならなければ、芸術ではないのだと言ったのです。 私は、これをコシノさんの芸術にも感じます。憎らしい顔を描いて、それが反骨になるのです。

―― 確かにそうです。

執行 だから、これがコシノ芸術だということです。

―― それは、綺麗な心と素直な心を持っているからですね。

執行 絵の具で言えば、汚い色の絵の具を使ったのに、出来上がった絵から綺麗な波動、美しい波動が来る。それが真の芸術だと、戸嶋も言っています。戸嶋が自分の芸術作品やいろいろな芸術作品について言っていたことを、コシノ芸術にも感じます。

 あちらに掛かっているコシノ芸術も、みんなゴテゴテした汚らしいような感じの中から生まれ出てくる芸術です。それをコシノさんが描くと、昔で言うと神のような、混沌の宇宙の中心からわれわれの生命を生み出してきた「苦しみ」や「喜び」へと変わるのです。

―― 変わるのですね。

執行 変わってしまう。だから、蓮(ハス)の花が描ける人なのです。蓮の花は泥水の中から出てきます。ですから、泥水を描いているように見えて、コシノさんが描くと自然に結果として、蓮の花が現れてくる。これが真の芸術家です。コシノジュンコは真の芸術家ということです。それが現れている1つがこれであり、向こうにあるのです。

―― 蓮の花になるのですね。確かにそうですね。

執行 面白いです。これが「憂国の芸術」の一番新しいコレクション。

―― なるほど。先生に解説してもらうと、ものすごく分かります。

執行 私の「憂国の芸術」は思想が一貫しているので、話せば分かりやすいのです。

―― わかりやすいですね。どこを見て、見つけてこられたのかが分かる。そして持っている魂は、みんな同じですね。

執行 同じです。それでいて芸術作品であり、他人の役に立てる。このコシノ芸術もずっと私が保存して、50年後100年後に才能がある人が見れば、コシノジュンコの生き方、魂のあり方が感じ取れると思います。感じ取って、「ああ、こういう日本人がいたんだ」ということで、自分もそういう生き方ができる。参考にできるのです。

―― それはすご...
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