憂国の芸術
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『葉隠』の「同じ人間が、誰に劣り申すべきや」を信じて
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良き日本人の魂を思い出すのは芸術作品と会ったときだけだ
憂国の芸術(1)芸術作品こそが心を動かす
考察と随想
執行草舟が、自身の芸術コレクションの中から、コシノジュンコ氏の作品などを紹介するシリーズ。執行草舟は、芸術として優れているのに加え、魂の燃焼に命をかけて生きた人たちの作品を「憂国の芸術」と名づけて集めている。その大きなきっかけは、『万葉集』を自分なりに愛読しているうちに、奈良時代の人たちの顔や姿、生活まで脳裏に浮かぶようになった経験をしたからである。日本の文化が落ちるところまで落ちたとき、後世の人間に「憂国の芸術」を見てもらい、過去に魂が立派だった人たちがいたことを想起してほしいと思ってのことであった。(全9話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:11分54秒
収録日:2021年12月2日
追加日:2022年1月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●魂の燃焼に命をかけた人たちの作品を集める意味


――まさに先生、「憂国の芸術」の空間ですね。この素晴らしさ。

執行 そうです。けっこういいでしょう、雰囲気が。

―― ものすごくいいですね。

執行 けっこう苦労しました、作るのに。「憂国の芸術」と勝手に自分のコレクションに題名をつけていますが、「憂国の芸術」の意味は、もちろん芸術作品として優れていることは大前提。芸術作品として優れているだけでなく、戦後の民主主義と飽食の時代にあって、本当の燃焼、自分の生命や魂の燃焼に命をかけて生きた人たちの芸術作品を集めるのが趣旨です。だから芸術の才能と生き方とが一緒になっているのです。

―― 一緒でないといけないんですね。

執行 なぜこれを私が集めて、後世に残すために展示会も開き、保存に膨大な労力とお金をかけているのかというと、要するに、私自身は思想としては、もう民主主義は行くところまで行くと思っています。文化がどんどん落ちていくことを止めることはできない。ある程度、行き着くところまでは、絶対行くだろうと。

―― もう無理ということですね。

執行 誰も止められない。何というのか、滑車が回っているというか……。

―― 落ち方の歯車が……。

執行 だけど私も曲がりなりにも日本人だし、日本という祖国に愛情があり、愛国心を持っています。私の愛国心の出し方が、「憂国の芸術」なのです。自分はある程度、商売もうまくいっている。だからちょっとした余力を今言った優れた日本人の芸術、そして自分の命をすべて生命燃焼させ、魂をすべてぶつけた日本人の作品をいろいろ集め、それを完全な形で後世に引き継いで、残しておく。これを私は最大の使命の一つだと思っているのです。

―― 後世への最大の遺物の一つですね。

執行 後世のためです。なぜなら本や説教といったものは、どんなにやっても人間は所詮ダメだと思っているからです。私も人の説教を聞いたことがありません。親の説教も聞かないし、先生なんて一つも受け入れない。自分もそうだったので、多くの日本人もそうだと思う。そして私自身もそうだったのですが、心を動かされたものは芸術作品なのです。芸術性があるもの、作品に限らず芸術性があるものです。

―― そちらのほうが魂に訴えかけるんですね。

執行 何か訴えてくる。そして私は理屈がなくなって、道徳や秩序といったものが全...