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パートナーとして見るとき、重要なのは国よりも企業文化

デュポンから見た世界と日本(3)グローバル、アジア、日本を比較する

田中能之
元・デュポン株式会社取締役会長/湧永製薬株式会社取締役
情報・テキスト
グローバル企業・デュポンから見て、中国、韓国、日本の各企業には果たしてどのような違いがあるのか。デュポン株式会社代表取締役社長・田中能之氏が、実体験から自身の見方を語る。(全4話中第3話目、インタビュアー:大上二三雄氏/エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役)
時間:09:09
収録日:2014/09/10
追加日:2015/01/14
≪全文≫

●ぱっと決める中国企業、大企業ばかりの韓国企業


大上 アジアの経済がどんどん成長していますから、デュポンが取引をする相手として、今は当然アジア企業との取引がとても増えているのではないかと思います。一方で、日本企業は停滞していますから、日本企業との取引はなかなか増えていないでしょう。そうやってさまざまな企業と付き合う中で、アジア、特に中国企業、韓国企業と日本企業で違いを感じるポイントは、一体どういうところですか。

田中 お客さまとしての企業と、合弁のパートナーとして関わる企業では少し違うと思います。お客さまとして見た場合、中国のお客さまは私からすると非常にアメリカっぽいといいますか、物事をぱっと決めてぱっと動くところがあって、日本のようなウェットなところがあまりないように感じます。ただし、中国のお客さまは、人がかなり大きなポイントになります。人を知っていないとどうしようもない。その点は中国独特だと思います。

大上 個人が立っているということですか。

田中 そうですね。人を知っているから話がつながるという風土は、日本も韓国もそのような面はありますが、中国が一番強いと思います。

 韓国のお客さまは、サムスンなどの大きなお客さまに集約されていますので、そこがかなり違います。日本の場合は、大きなお客さま以外にも、中小のお客さまがいっぱいいるのです。いろいろなお客さまがいるのが日本で、韓国は大きなお客さましかいないというイメージがどんどん強まってきました。大きなお客さまだからこそ、こちらも全力で関わらなくてはならないとか、いろいろなレベルで話をしなくてはならないとか、その辺りが韓国のお客さまと付き合うときは重要だと思います。

 日本は、大きなお客さまからそうでもないお客さままで、いろいろな種類のお客さまがいるところが、他の国に比べると面白いというか、少し変わっているという感覚があります。


●企業文化などが合えば、良きパートナーになれる


田中 一方でパートナーとして見るときは、国というよりは、その企業がどのような文化で、どのようなビジネスの進め方をしているか、それらの点で私たちと相容れることができるかどうかが基本的に重要です。

大上 国よりは企業ですか。

田中 はい。ですから、持ち寄る技術などがそれぞれ補完関係にあって、先ほど私が申し上げた四つのコアバリューと似ている企業文化の会社ならうまくいくのです。四つのコアバリューを全く持っていないところだと、どの国籍の企業でもうまくいきません。

大上 そのような企業は、相対的に見て日本には多いでしょうか、少ないでしょうか。

田中 日本だから多いという感触は、私にはあまりないです。どこの国も同じような感じではないかと思います。

大上 中国にも韓国にもそのような企業があるのですね。

田中 私はあると思います。ただ、レベルによっていろいろな差異がありますから、この人たちのこの点は私たちと本当に同じくらいだろうといった感覚で、細かなところまで見ることがやはり判断する上で重要だと思います。


●意思決定は遅いが、決めたら熱心に動く日本企業


大上 よく日本企業が遅いと言われる意思決定のスピード、あるいは決定権限の曖昧さで違いを感じることは、正直ありますか。

田中 やはり国だけではなく、企業にもよるでしょうが、意思決定は中国も韓国も速いと思います。アメリカも速いと思いますが、そういう意味では日本が一番遅いだろうと思います。結局、コンセンサスをベースにするのが日本のやり方ですから、コンセンサスを取るまでの時間がかなりかかります。

 それに比べると、他の国の企業は、コンセンサスが取れたらベストですが、取れなくても決定しましょうという意識が強く、半分以上が賛成したら決定することが多いです。たとえ反対が半分くらいいても、半分以上賛成だったら決める感覚があります。

大上 少し話が逸れますが、デュポンのサイエンスカンパニーへの変身は、やはりほぼ100パーセントの賛成で進んだのですか。

田中 私の感覚で言うと、80パーセントくらいはそれが良いと思っただろうと思います。

大上 80パーセントのコンセンサスは取って進めたということですか。

田中 コンセンサスを取るプロセスがはっきりあったかというとそうではなく、どちらかといえば、「このように進めます」と言われて、皆は「そうなのか」と考えたという感覚に近いです。上から強制されたという意識はあまりないと思いますが、決めるときは上が決めて、それで皆が納得したという感じです。

大上 では、話をまた本論に戻します。日本企業は決めるまでに時間がかかる一方で、中韓の企業は50パーセントの賛成でも進めてしまうわけですが、決まった後、そのことに...
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