テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

縦だけでは駄目! 横を大事するデュポンの社風

デュポンから見た世界と日本(2)コアな強みに立脚する日本の価値

田中能之
元・デュポン株式会社取締役会長/湧永製薬株式会社取締役
情報・テキスト
デュポングローバルに占める日本の売上比率は、わずか4パーセント。だが、日本には、売上の数字以上の価値がある。それは一体何なのか。デュポン株式会社代表取締役社長・田中能之氏が語る日本と世界。(全4話中第2話目、インタビュアー:大上二三雄氏/エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役)
時間:15:55
収録日:2014/09/10
追加日:2015/01/13
≪全文≫

●日本は、デュポングローバルの重要な開発拠点


大上 では、そういった大きな変化をしていくデュポンの中で、日本という存在、日本の存在感をどのように考えていますか。最近、外資系の日本のトップに「ジャパンパッシング(Japan Passing、日本外し)」というようなことを言われることが多いのですが。

田中 私も前任者も、それぞれ自分の日本に対する考えをトップに言っています。ですので、必ずしも同じことがずっと言われているかどうか私には分かりませんが、私が日本を見る見方では、売上でどれだけ貢献するかということだけではなく、日本の貢献は他にもあるというところを、強く打ち出しているつもりです。

大上 売上全体に占める日本の割合は今、何パーセントぐらいですか。

田中 トータルの4パーセント弱ほどしかないはずです。

大上 あまり大きくはありませんね。

田中 大きくないのですが、日本の存在には、また違う意味があります。

 少し話が細かくなりますが、私どもデュポンはアメリカの会社ですが、アメリカ本国の売上は全体の30何パーセントで、もう40パーセントを切っています。それ以外は全て海外ですので、ずいぶんグローバル化しているとは思います。ですが、では国別に売上を考えていくとどうかというと、アメリカの30何パーセントというのはダントツに大きいのです。それ以外というと中国やブラジルがありますが、数字としてはもうはるかに離れていて、日本は4パーセントといっても5番目なのです。ですから、数字の上ではアメリカ以外は総じて小さいという状況です。

 そうすると、例えばこれから伸びる国である中国やブラジルの場合は、その「これから伸びる」ということが、その国の意義になります。日本は日本で伸びますが、やはりGDPの伸び自体が全然違うので、比較になりません。むしろ日本は、これから伸びるということが前面に出てくるより、日本ならではの貢献があるだろう、それは売上だけではないだろうと私は考えています。

 そこで私がよく言うのは、日本の研究開発における貢献です。つまり、日本が最先端を行っているような業界で、日本で研究し、開発して、製品を出し、それが外に波及していくということがあって、日本でやらなければそれができない。日本はこうした研究開発の部分での貢献が、やはり大きくあるということです。


●「10パーセント」の日本~日本の価値を常に世界にアピールし続ける


──(編集部) 4パーセントの売上というのは、額にしていくらになりますか。

田中 日本の売上ですか。1200億円くらいでしょうか。

── それに対してアメリカの30パーセント強は、どれくらいになりますか。

田中 全体の売上はトータルで3兆6000億円ですから、その30パーセント強だと、1兆強でしょうか。普通、国ごとの売上というのは、私たちはあまり見えないのです。私はある程度日本のことは知っていますが、アメリカはいくら売っているのかというようなことは、ほとんど出てこない数字なのです。

── そういう組み立てになっているのですね。

田中 どちらかというと、最初からグローバルで見てしまいます。例えば、日本国内での売上が仮に1200億円なら1200億円とします。ですが、日本のメーカーが海外進出をして、中国やベトナムやタイでつくるものについて、どうしたらそこで売上が上がるかというと、日本で認定をして、お膳立てをし、アメリカからそこに出荷するというようなプロセスになります。日本でやらなければ、ここの売上がないのです。ですから、日本国内の売上だけではなく、その外側に同じぐらい大きな売上があるではないか、日本でやめたらこっちもなくなりますよ、という貢献のあり方もあるのです。「売上だけでない貢献が日本には他にもあります」「こういうことをやる国は世界で他にどこにありますか」ということです。そういう議論は、他の国には案外少ないのです。

大上 日本と、他にどこがありますか。

田中 おそらくドイツではないかと思います。

大上 やはり日独なのですね。

田中 最先端のことをしているお客さまがいたり、最先端の研究をしている組織や国があります。ですから、先ほど挙げた中国などは、これからそうやってどんどんもっていくと思いますよ。ブラジルもそうで、それこそ食料関係のビジネスが大きいですから、これからどんどん伸びると思いますが、日本には日本の独自の意義があります。日本を見るときには、そういうことも見てくれないと、変な話、ジャパンパッシングのようなことになりかねないという気はしています。

大上 では、そういう日本の連結決算、つまり日本発の製品と日本企業への売上、そういったものを合計すると、日本というものの数字はおよそ何パー...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。