テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
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「弱き者」を助けるのか、「強き者」をより強くするのか

価値と人間(1)現代の日本が忘れている価値

概要・テキスト
昨今の世界情勢を見渡すと、ヨーロッパもアメリカも日本もヒューマニズムの綺麗事で身動きが取れなくなっているように見えるのは、なぜだろうか。ローマ帝国時代の「最善のものが堕落した場合、最悪のものになる」ということわざが、その大きなヒントとなる。「弱い者を助けよ」という風潮があるが、今大切にすべきは、逆に「強い者を助ける」ことなのかもしれない。その視点から、明治日本の気概について見ていく。(全8話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:14:11
収録日:2024/01/31
追加日:2024/03/29
カテゴリー:
≪全文≫

●「最善が堕落した場合、最悪になる」


執行 今、思想的に日本社会に一番重要なものが何かを考えたとき、世界中がヒューマニズムに襲われています。ヒューマニズムが行き過ぎて、ヨーロッパもアメリカも日本も身動きが取れなくなっています。

―― おっしゃる通りです。

執行 ローマ帝国が滅びるとき、ローマ帝国の賢者たちが一番重要視していた、ことわざにまでなっている言葉があります。それは「最善のものが堕落した場合、最悪のものになる」という思想です。

―― まさに今の日本社会ですね。

執行 そう。日本だけではない。ヨーロッパもそうです。移民問題一つ、ヨーロッパが止められないのも、要は人権の問題です。人権やヒューマニズムを「悪い」と言うことは、もう誰もできないのです。

 ヨーロッパは散々、人権とヒューマニズムを武器に、アジアとアフリカを100年前までは植民地にしてきました。今、それにヨーロッパは返り討ちに遭っているのです。自分たちが言ってきたことだから。日本は先頭に立っていなかったから、まだいいほうです。

 一番重要なことは、最善のことほど堕落した場合、最悪のものになるという考え方です。ローマ帝国の賢者たちが、この世で一番大切な思想と言っていたそうです。イヴァン・イリイチという一昔前に有名だった(オーストリアの)哲学者の本で、現代社会を考えるにあたり、今の言葉を引用されています。

 ヒューマニズムはご存じのように、キリスト教から生まれています。

―― そうですね。神の厳しさが……。

執行 そう、神があってのヒューマニズムです。ところが、ヨーロッパはキリスト教を捨てたので、ヒューマニズムだけが独り歩きしています。ヒューマニズムは、キリスト教の中の最も尊い教えだから、もちろん最善のものです。この最善のものが、神を失うことによって堕落したのです。そして今、世界を覆う、悪い言葉でいうと「何でもあり」みたいな、移民一つ止められない、とんでもない事態になっているのです。

―― おっしゃる通りですね。

執行 聖書でキリストが直に話している言葉が「マタイ伝」10章34節以下に書いてあります。夫婦の愛情も大切、親子の愛情も大切、もちろん家庭はすごく重要といった内容です。

 ただ、あの頃はユダヤ教社会だから、ユダヤ教の神の掟です。神の掟に家族が背いた場合は即離婚で、即親を捨てる、子ども...
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