権力政治化する国際社会と国際協力
国際協力システムの強化に関して出てきた2つの好材料
権力政治化する国際社会と国際協力(1)環境における日本の役割
政治と経済
高橋一生(元国際基督教大学教授/リベラルアーツ21代表幹事 )
国際社会は 権利政治と国際協力という二重構造で成り立っていると語る日本国連学会理事であるリベラルアーツ21代表幹事の高橋一生氏。現在は、中国によるアメリカの覇権へのチャレンジや、混乱する中近東への各国の対応が対立するなど、世界全体が権力政治を優位とする社会になっている。そんな世界構造の中、環境と国際開発協力という二つの視点から、髙橋氏が日本の役割を提示する。(前編)
時間:14分13秒
収録日:2014年10月28日
追加日:2015年2月9日
収録日:2014年10月28日
追加日:2015年2月9日
≪全文≫
●二重構造で成り立つ国際社会で、現在は権力政治優位社会になっている
国際社会は、非常に明確な二重構造で成り立っていますが、その一つは、国益を表にギラギラさせながらお互いにやり合うという構造です。その構造は、権力政治(パワー・ポリティクス)によって成り立つ国際社会です。
それから、もう一つは、国際社会全体の利益と自分の国の利益との調和を何とか模索していく、あるいは、相手国と自分の国の利益の調和を何とか探し出して具体化していくという側面の構造です。この二つ目の側面の総和という形で、国際協力というシステムがもう一つ国際社会の中にできています。
今は、ナンバー2の中国が体制の異なるナンバー1のアメリカにチャレンジするという状況です。これは、国益と国益がガチンとぶつかることを意味します。そうなると、今までなら、戦争に結び付いてしまう構造がありました。
それを前提にして考えてみますと、世界のいくつかの問題、例えば、クリミア半島の領土化をはじめとした、ロシアによる周辺諸国への対応が、いわゆる西側諸国から非常に大きな反発を受けているという構造を挙げることができます。
さらには、中近東で起こっている混乱に対して、非常におずおずとではありますけれども、武力介入をするアメリカ、イギリス、フランス、カナダ等々の対応です。それに対して、ロシア、中国が反対することから、世界全体が権力政治化しつつあるわけです。つまり、国際社会の二重構造の中、権力政治が優位する社会になってしまっているのです。
●歴史的には、近代国際社会は紛争を乗り越えて国際協力が強くなってきた
こういう基本的な世界構造がある状況では、例えば、日本の立場からしますと、日本は、米中というナンバー1、ナンバー2のつばぜり合いの一番のフロンティア・ステイト(前線)にあるわけですから、当然のことながら、安全保障に関して非常にシビアに対応しなくてはなりません。こういう状況でシビアに対応しないということは、国際社会にとって非常に大きな問題になるのです。したがって、好き嫌いの問題ではなくて、日本は安全保障に関してシビアなスタンスをとらざるを得ないと思います。
けれども、中長期的に見ますと、国際社会は、権力政治の側面において勝った負けたということでそれぞれの国の存立基盤が確保されるという状況は非常にまれで...
●二重構造で成り立つ国際社会で、現在は権力政治優位社会になっている
国際社会は、非常に明確な二重構造で成り立っていますが、その一つは、国益を表にギラギラさせながらお互いにやり合うという構造です。その構造は、権力政治(パワー・ポリティクス)によって成り立つ国際社会です。
それから、もう一つは、国際社会全体の利益と自分の国の利益との調和を何とか模索していく、あるいは、相手国と自分の国の利益の調和を何とか探し出して具体化していくという側面の構造です。この二つ目の側面の総和という形で、国際協力というシステムがもう一つ国際社会の中にできています。
今は、ナンバー2の中国が体制の異なるナンバー1のアメリカにチャレンジするという状況です。これは、国益と国益がガチンとぶつかることを意味します。そうなると、今までなら、戦争に結び付いてしまう構造がありました。
それを前提にして考えてみますと、世界のいくつかの問題、例えば、クリミア半島の領土化をはじめとした、ロシアによる周辺諸国への対応が、いわゆる西側諸国から非常に大きな反発を受けているという構造を挙げることができます。
さらには、中近東で起こっている混乱に対して、非常におずおずとではありますけれども、武力介入をするアメリカ、イギリス、フランス、カナダ等々の対応です。それに対して、ロシア、中国が反対することから、世界全体が権力政治化しつつあるわけです。つまり、国際社会の二重構造の中、権力政治が優位する社会になってしまっているのです。
●歴史的には、近代国際社会は紛争を乗り越えて国際協力が強くなってきた
こういう基本的な世界構造がある状況では、例えば、日本の立場からしますと、日本は、米中というナンバー1、ナンバー2のつばぜり合いの一番のフロンティア・ステイト(前線)にあるわけですから、当然のことながら、安全保障に関して非常にシビアに対応しなくてはなりません。こういう状況でシビアに対応しないということは、国際社会にとって非常に大きな問題になるのです。したがって、好き嫌いの問題ではなくて、日本は安全保障に関してシビアなスタンスをとらざるを得ないと思います。
けれども、中長期的に見ますと、国際社会は、権力政治の側面において勝った負けたということでそれぞれの国の存立基盤が確保されるという状況は非常にまれで...
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
人気の講義ランキングTOP10
生物学からわかる「ヒトの配偶や子育て」で大切なこと
テンミニッツ・アカデミー編集部
親も子もみんな幸せになる方法…鍵は親性脳のスイッチ
長谷川眞理子