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カーボンニュートラル達成へ、エネルギー政策の変革は必須

日本のエネルギー政策大転換は可能か?(3)エネルギー政策大転換への提言

鈴木達治郎
長崎大学客員教授/NPO法人「ピースデポ」代表
概要・テキスト
洋上や太陽光を活用した発電の素地がありながらその普及が遅れている日本。その遅れにはどのような要因があるのだろうか。最終話では、送電網の強化など喫緊の課題を取り上げるとともに、エネルギー政策を根本的に変換させる必要を指摘し、2050年カーボンニュートラル達成に向けて大事な提言を行って本講義を締めくくる。(全3話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:13:03
収録日:2025/04/04
追加日:2025/08/24
≪全文≫

●再生可能エネルギーの普及が遅れている理由


―― 次に、質問の方向を少し変えまして、日本において再生可能エネルギーを伸ばしていくためにどうするかという点でございます。

 今はもちろんかなり進んでいる部分もあるかとは思うのですけれど、半面、例えば山林などの景観の問題ですが、いろいろなことでの反対といいますか、このまま進めていいのかという声も上がっているような状況です。今の日本の再生可能エネルギーの進捗の具合、課題、問題点についてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。

鈴木 そうですね。経済性が安くなっているわりには普及が遅れてしまった1つの理由は、FIT(固定価格買取制度)といわれている制度です。たくさん入ったわけですけれど、それが結局どんどん固定価格が下がってしまって、発電事業者のリスクが高くなってしまっているというのは多少あるかもしれません。これが1点です。だから、制度をもう一度見直す必要はあるかもしれません。

 2点目は送電網、送電能力、送電容量の拡充が遅れていることです。要するに、太陽エネルギーも風力発電も風が吹いているところ、晴れているところというのは日本中どこかにあるわけです。それで、不安定ではもちろんあるのだけれど、余っているところから足りないところにすぐ電気を送れるようになれば再生可能エネルギーの活用はもっと増えると。

 例えば九州です。私は九州に今いるのですけれど、太陽光エネルギーがピークのときには、太陽光エネルギーを全部使うと、需要を超過してしまうのです。供給超過になるのです。そのときにどうするかというと、太陽エネルギーを残すのではなくて、原子力発電と火力発電をまず優先的に動かして、残りを太陽エネルギーでやってしまうので、太陽エネルギー出力抑制というものをしなければいけなくなります。

 どうしてそういうことをするかというと、送電容量が足りないのです。余った太陽エネルギーをどこかに使うというためには、足りないところは運ばなければいけないのですけれど、そのためにわざわざ出力抑制を(しなければいけない。そうなると、)太陽エネルギーはせっかく発電いっぱいできているのに、それが使えなくなっているのです。

 まず原子力(発電)と火力発電の優先順位を逆転して、それでまず再生可能エネルギーからどんどん使っていく。そのためには送電容量を拡大して、足...
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