テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

2011年以降の消費の拡大は内需中心への構造変化

中国経済は安定保持(2)消費主導と雇用増大

瀬口清之
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
情報・テキスト
「中国経済は失速ではなく安定を保持している」と言うのが、中国経済の専門家、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・瀬口清之氏の分析だ。その根拠となるのは、この10年間の経済事情を物語るデータである。数字とともに、習近平政権以降の中国の最新経済事情の「読み方」を探っていく。(全15話中第2話目)
時間:12:04
収録日:2015/01/05
追加日:2015/03/12
タグ:
≪全文≫

●中国の輸出低下傾向が下げ止まりを迎えた2014年


 さて、次に、足元のGDPの主な構成要素である輸出投資、消費等について、簡単にご説明を差し上げたいと思います。

 まず、輸出については、次のグラフを見てください。太い青い実線の折れ線グラフが、輸出の推移(前年比)を示しています。2010年をピークにして、ずっと低下傾向が続いてきています。

 実は2014年の年初まで、「輸出はどこまで下がるのか」という懸念がありました。伸び率はマイナスに落ち込み、黄色の棒グラフが示す貿易収支もマイナスに近づいてきたため、エコノミストの間では貿易赤字に陥る懸念すら、かなり共有されていたほどです。

 ところが、2014年に入ると状況は一変します。欧米や日本などの先進国が景気回復するとともに、輸出が回復し始め、その上に最近の原油安が加わりました。黄色い貿易収支の数字を見ていただくと、第2クオーターから第3クオーターと、貿易黒字がすごい勢いでまた膨らんできています。


●史上最高額の貿易黒字だが、輸出主導の時代は終幕


 足元1月から11月までの数字を計算すると、すでに3000億ドルの大台を超え、3500億ドルも超えようという勢いで、貿易黒字が増えつつあります。2008年に記録した過去最高の貿易黒字額2981億ドルの数字すらすでに超えてしまい、史上最高の黒字額をたたき出しているのが、現在の中国の輸出入の動向です。現在の原油安の動向は、そう簡単には収束しそうもないため、2015年も貿易黒字基調に大きな変化はないものと考えられます。

 ただし、以前のように、輸出が前年比20パーセントも伸びて中国経済を牽引するという時代は、すでに終わっていますので、大体0~10パーセントの間ぐらいを緩やかに推移する格好を取るでしょう。輸出主導でGDP成長率を引き上げる時代は、すでに終わっているとご理解いただければと思います。


●過剰設備削減によって、固定資産投資の伸び率も鈍化


 さて、中国のGDPに占める次の主要コンポーネントは、固定資産投資です。このグラフでは、太い黒の実線が固定資産投資累計額の伸び率(前年比)推移になります。ご覧いただくと、2004年ごろから2010年ごろまで、ずっと前年比25パーセントから30パーセントぐらいの非常に高い伸びを示してきて、2010年あたりを境に、緩やかな下降傾向に入っています。これは、2009年から2010年にかけて、国内で非常に強い財政刺激策を行った結果として、鉄鋼・造船・石油等、さまざまな重厚長大系の産業分野で不必要な投資が行われてしまい、結果的には過剰設備を抱えてしまったことの現れです。

 過剰設備をそのまま放置しておくと不良債権化することに気づいた政府は、2011年から過剰設備削減についての厳しい指令を出しました。金融機関からの貸し出しを絞り、発展改革委員会を通じて過剰な設備をさらに積み増すような設備は認めないという政策を採り始めています。


●第2次産業から不動産開発にもじわじわと影響


 その結果が、青い点線で示された第2次産業(製造業)の固定資産投資の伸び率低下に現れているのが分かると思います。鉄鋼、造船、アルミ、セメントなど、第2次産業の主要な産業が、軒並み過剰設備の削減に入ったため、第2次産業は全体としてかなり急速に伸び率を低下させてきています。

 第2次産業の低下に加えて、足元は不動産も伸び悩んでいます。赤い線で示したのが不動産開発投資ですが、2014年に入ってからは、若干伸び率が鈍化してきています。

 それらが両者相まって、固定資産投資全体を押し下げてくるわけですから、足元でも緩やかに固定資産投資の伸び率は鈍化を続けています。過剰設備の削減はまだ当面も続きますので、今後おそらく2、3年はこのような緩やかな固定資産投資の伸び率鈍化が続いていくだろうと予想されています。

 したがって、2003年から2012年までの長期にわたって中国で続いてきた輸出投資主導の時代は、ここでほぼ終わりを告げていると見ていいと思います。


●輸出投資主導「次の主役」は何か?


 そこで、次のグラフを見ていただくと、輸出投資主導時代の「次の主役は何か」ということが、徐々に見えてきます。それは、消費が代わって下支えになってくるということです。

 もちろん2003年から2007年にかけてみられたような2桁の成長率が戻ってくるわけではありません。ですから、そこまでの強い牽引力があるわけではありませんが、少なくとも7パーセントから6パーセントぐらいの高度成長であれば、消費が引き受けて支えるという時代に入ってきています。

 それを示すのが、「GDPに占めるコンポーネント別ウェイト」と題したグラフです。


●投資...

テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。