「腸脳相関」という言葉がある。健康には腸内環境が大切といわれるが、腸で重要な役割をしている物質が脳にも存在することが分かっている。「バランスの良い食事」が健康ひいては睡眠にも大切なのは、このためだ。人生は寝るためにあるわけではない。睡眠は起きているときを充実させるためにある。最終話では「睡眠」そのものの考え方の基本に立ち返ることで、睡眠不足などバランスを崩している暮らし方を見直す契機としたい。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●「腸脳相関」――同じ物質が腸と脳の動きをコントロール
―― さらにお聞きしたいのが、腸内環境です。腸内の環境が睡眠にどう影響するかについて、いかがでしょうか。
西野 必ずしも睡眠だけではありません。腸の環境は健康には非常に重要なものです。昔から、例えば「腸脳相関」という言葉がある。脳の中で神経伝達を担っている物質が、腸でも役割を果たしているのです。逆に、腸で見つかったものが後で脳にもあることも分かったりしている。
そういった役割を果たしているものといったら、例えば小さいものではアミノ酸です。アミノ酸よりも大きいものでは、アミン類があります。ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、それからアミノ酸がつながったペプチド、そういったものが神経伝達を果たしていて、同じものが脳にも腸にもある。そのもとはアミノ酸が多いのです。
アミノ酸といえば、ご存じだと思いますが「必須アミノ酸」が9つある。その中に、例えば今言ったドーパミン、ノルエピネフリンになるような前駆物質があります。それからセロトニンの元になるようなものなどもある。腸管がそういったものを吸収、分解してアミノ酸にするという役割をしているので、脳の働きにおいても腸の働きにおいても、非常に重要なものなのです。
基本的にはバランスの良い食事をしていたら心配することはありません。腸内の環境を整えるということでは、やはり睡眠だけではなく、健康が大切です。だから暴飲暴食はよくない。睡眠に関しては、寝る前に油っこいもの、しつこいものを食べるのは良くないし、偏った食事も良くない。もちろんストレスも良くない。
ストレスですぐ下痢をする人がよくいますが、頻繁にかかると下痢だけでは済まず、腸の病気にもなる。そして腸内環境も良くない。そうなると、やはり全ての健康を害します。睡眠もその1つだということです。だから、神経質になる必要はなく、バランスのよい食事をして、アルコールや喫煙が良くないのは分かっているので控え、できるだけストレスがかからないようにする。ごく当たり前のことだと思います。
同じような物質が、腸内の動きや、精神・神経の活動をコントロールしている。そういう意味では相関があって、重要だということは間違いないと思います。
―― ありがとうございます。そういうお話を聞きますと、体というものは個々別々ではなくて...