印象派の解体と最後の印象派展
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大スランプに陥ったルノワール…どう活路を見いだしたのか
印象派の解体と最後の印象派展(2)ルノワールのスランプ
安井裕雄(三菱一号館美術館 上席学芸員)
ルノワールは生業として絵を描き続けるために、印象派展から遠ざかりサロン出品に舵を切るようになった。輪郭がぼやける印象派的な画法によりスランプに陥ったが、輪郭線をはっきりと描き出すアングルなどにヒントを求める。アングルの表現は、ルノワールがスランプを脱出する大きな助けになったが、セザンヌの構築的筆触もまた、ルノワールは参考にしている。(全5話中第2話)
時間:9分47秒
収録日:2023年12月28日
追加日:2026年3月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●絵を売るために遠ざかった印象派展


 ルノワールの《ムーラン・ド・ラ・ガレットの舞踏会》という、代表作中の代表作ですが、こちらの習作は、アメリカのプライベートコレクションであるホイットニー・コレクションに入っていたものを、オークションに出たときに日本人の当時の収集家――フィンセント・ファン・ゴッホの《ポール・ガシェの肖像》を買った齊藤了英氏――が史上最高値のルノワールとして競り落としたことでも知られています。

 それほどの名作ではあるのですけれど、ルノワール自身はこの作品および一連の印象派期の著名作品を最後として、印象派展には出品しなくなってしまいます。

 ルノワールは、どちらかというと人物表現が得意な画家でした。それにもかかわらず、(モネが風景画で試みたような)絵の具を並べる表現を試みています。ですので、この頃から、ルノワールはすでに少しジレンマに陥っていたともいわれています。

 ルノワール自身は印象派展よりもサロンに出品することを重要視しました。つまり、「印象派展に出品してもお客さんたちの目に触れない。全然売れないではないか。サロンに出品することによって、初めて画家は世間の評価を得て、そして売れることができるのだ」と(いう趣旨のことを)言っていました。

 ルノワールはもともと職人の子どもだったのです。セーブルの陶磁器の絵付けとか、ものによっては、例えば日よけの庇(ひさし)の部分――これはカンヴァスで作るもの――に絵を描いたりもしていましたので、根っからの職人気質なのです。だから、絵を描くのも楽しみながら、完全に生活の糧を稼ぐため、生業のためという意識が際立っていた画家でもありました。

 それはさておき、ルノワールはサロンに復帰します。若い頃には印象派展の前にはちゃんとサロンに出品して、審査も通っていたこともあるのですが、久しぶりにサロンに復帰した作品が好評を得るようになります。

 特に1879年のサロンに出品した、この《シャルパンティエ夫人と子どもたち》という作品は大好評を得ます。

 シャルパンティエは出版業で財を成した、ルノワールの当時のパトロンの1人です。マダムが子どもたちと一緒に豪華なリビングでくつろいでいる姿、お召し物は大変美しい。高価なドレスだと思うのです...

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