『孫子』を読む:地形篇
ベトナム戦争でホー・チ・ミンが学んだ『孫子』地形篇とは
『孫子』を読む:地形篇(1)六地形の戦略を学ぶ
田口佳史(東洋思想研究家)
2.「敗の道」と「上将の道」――現場のリーダーの心得として
2026年3月29日配信予定
3.逆命利君か従命病君か――漢の時代から伝わる重要な戦略論
2026年4月5日配信予定
『孫子』の第10篇に位置づけられる「地形篇」は、戦いの勝敗を左右する地形の読み方を6つに分類し、それぞれの状況に応じた戦略を説いている。これを現代のビジネスに置き換えれば市場環境の分析であり、人生においては自分の置かれた状況を見極めることだ。社会環境が激変するこの時代において、リーダーは状況を正確に読み解き、適切に判断する力が求められており、この「地形篇」から学ぶことは重要である。(全3話中第1話)
時間:10分35秒
収録日:2020年10月9日
追加日:2026年3月22日
収録日:2020年10月9日
追加日:2026年3月22日
≪全文≫
●6つの地形に合わせた戦略を学ぶ
今日は『孫子』10篇目の「地形篇」です。このところ、「行軍篇」から地形の話へ入っているわけです。この地形というのは、軍隊では非常に重要で、地形を読んでそれを活用するということなのです。
これをまずビジネス孫子風にいえば、地形といえば、マーケットの状況です。マーケットの状況をよく見なければいけないということをいっています。また、人生孫子でいえば、これは現在の自分の人生の状況がどうなっているのかを、客観的にいつもしっかり見ておく必要がある、知っておく必要があるということなのです。
そのようにしないと、やり方が違ってしまう。いつも同じように人と付き合うということではなくて、こちらがやや劣勢になっているとか、ちょっとここは失敗続きだとか、ここはすごく成功続きだとか、そういう状況によって、やはり多少は人との付き合いを変えていかないとうまくいかないのです。こういうことをいっているわけです。そういう意味では、そのように読んでみると、とても蘊蓄のあるところです。
では読みましょう。「孫子曰く、地形に、通なる者有り、挂なる者有り、支なる者有り、隘(あい)なる者有り、険なる者有り、遠なる者有り」。ここで通、挂、支、隘、険、遠と、6つ挙げているわけです。(なお、)ここでは6つなのですけれど、次の「九地篇」になると9つ挙げるわけで、そこは多少ダブっています。これはあらかじめ申し上げておかなければいけないのですが、ここでは6つ挙げているわけです。
その次は、今挙げたものに形が付き、通形、つまり通という形、通形、それから挂形、支形、それから隘形、険形という説明に入ります。
まず、通形です。「我以て往く可く、彼以て来る可きを通と曰ふ」。これは要するに向こうも来やすい。こちらも敵軍のところへ行きやすいという、そういう状況を通というのです。「通形は先づ高陽に居りて糧道を利し、以て戦へば則ち利」なのです。「高陽に居りて」というのは、前の篇でも申し上げたように、やはり高いところにいるということは、それだけ見渡せて情報が的確に入ってきます。
それから、特に戦いなどのときは、宿営する場所としてそれこそ寒いところで宿営してしまうと、1日において兵力はガクンと落ちてしまうということがあります。そういう意味では、...
●6つの地形に合わせた戦略を学ぶ
今日は『孫子』10篇目の「地形篇」です。このところ、「行軍篇」から地形の話へ入っているわけです。この地形というのは、軍隊では非常に重要で、地形を読んでそれを活用するということなのです。
これをまずビジネス孫子風にいえば、地形といえば、マーケットの状況です。マーケットの状況をよく見なければいけないということをいっています。また、人生孫子でいえば、これは現在の自分の人生の状況がどうなっているのかを、客観的にいつもしっかり見ておく必要がある、知っておく必要があるということなのです。
そのようにしないと、やり方が違ってしまう。いつも同じように人と付き合うということではなくて、こちらがやや劣勢になっているとか、ちょっとここは失敗続きだとか、ここはすごく成功続きだとか、そういう状況によって、やはり多少は人との付き合いを変えていかないとうまくいかないのです。こういうことをいっているわけです。そういう意味では、そのように読んでみると、とても蘊蓄のあるところです。
では読みましょう。「孫子曰く、地形に、通なる者有り、挂なる者有り、支なる者有り、隘(あい)なる者有り、険なる者有り、遠なる者有り」。ここで通、挂、支、隘、険、遠と、6つ挙げているわけです。(なお、)ここでは6つなのですけれど、次の「九地篇」になると9つ挙げるわけで、そこは多少ダブっています。これはあらかじめ申し上げておかなければいけないのですが、ここでは6つ挙げているわけです。
その次は、今挙げたものに形が付き、通形、つまり通という形、通形、それから挂形、支形、それから隘形、険形という説明に入ります。
まず、通形です。「我以て往く可く、彼以て来る可きを通と曰ふ」。これは要するに向こうも来やすい。こちらも敵軍のところへ行きやすいという、そういう状況を通というのです。「通形は先づ高陽に居りて糧道を利し、以て戦へば則ち利」なのです。「高陽に居りて」というのは、前の篇でも申し上げたように、やはり高いところにいるということは、それだけ見渡せて情報が的確に入ってきます。
それから、特に戦いなどのときは、宿営する場所としてそれこそ寒いところで宿営してしまうと、1日において兵力はガクンと落ちてしまうということがあります。そういう意味では、...