『孫子』を読む:地形篇
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「敗の道」と「上将の道」――現場のリーダーの心得として
『孫子』を読む:地形篇(2)敗戦に至る「6つの特性」
田口佳史(東洋思想研究家)
「敗の道」――孫子によれば、戦いで敗れる軍隊には6つの特性があるという。具体的には「弛」「崩」「乱」などの言葉を挙げているが、6つどれもが天災などのよるものではなく、リーダーの過失だと説いている。そして、「上将の道」として、優れたトップこそ敵の状況を正確に把握して戦略を立て、知識を実戦に活用すると語る。では「戦道」、つまりこうすれば勝てるという戦略が立たないときはどうするか。現場のリーダーに求められる判断についても解説する。(全3話中第2話)
時間:11分34秒
収録日:2020年10月9日
追加日:2026年3月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●敗れる軍隊には「6つの特性」がある


 その次です。「故に兵に走る者有り、弛む者有り、陥る者有り、崩るる者有り、乱るる者有り、北(に)ぐる者有り」といっています。ここで孫子は何をいっているのかというと、敗戦に至る、敗れる軍隊の特性というものを6つ挙げて、こうなってしまってはいけないということを挙げているのです。

 (例えば)「陥る者」、つまり陥るというのは、士気が上がらないで、みんなが何かどんより曇っているようなものです。それから「崩るる者」とは、将軍の独断、リーダーの独断専行をしすぎて、自分勝手に兵を動かしたために、組織として崩壊していくということです。そして、「乱るる者」とは、いろいろなことがあり軍として組織が一体化していない、そういう乱れている状態です。それから、「北(に)ぐる者」とは敗走するということです。

 今挙げたものは6つあるのですけれど、この6つの者は「天の災に非ず、将の過なり」ですから、これは自然にこうなっているのではなく、全ての責任はリーダーにあるのです。リーダーが心得なければいけないことは、このように組織がなっているのはあなたの責任なのだということです。自分の責任として、これはしっかりさせなければいけないわけです。

 ですから、そういう意味では、将軍としてこの6つの状況は大事です。まず、組織が弛んでいる、統制力がないという状態になっていないか。それから、士気が上がらず、みんなやる気がなく意欲的ではない状況になっていないか。そして、組織力という点でバラバラになっていないか。それから、「乱るる」というところから、目的が統一され考えも統一して1つの心になって進んでいない、そういう状態になっていないか。さらにみんなが、もうこのような商売はやめようなどと逃げ腰になっていないか。このような6つの状況は絶対によくないといっているわけです。


●「敗の道」――リーダーこそ心得ておくべき注意点


 そこで孫子は、この6つの状態の1つ1つを、もう一歩中に入って説明しています。「夫れ勢均しくして、一を以て十を撃つを走と曰ふ」と。つまり、「一を以て十を撃つ」というのは何かというと、これは大きな大軍、要するに強敵に対して戦いを挑むなどというのは、それこそ敗走する軍の状態になるということをまずいっているわけです。


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