『孫子』を読む:地形篇
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
逆命利君か従命病君か――漢の時代から伝わる重要な戦略論
『孫子』を読む:地形篇(3)逆命利君の教えと絶対的勝利の条件
田口佳史(東洋思想研究家)
「逆命利君」という言葉がある。漢の時代の学者・劉向が著した中国の古典『説苑』に出てくる言葉で、君主の命令に逆らって利を上げ、それを君主に差し上げる、それを忠ということ。これは戦略論として覚えておくべき非常に重要な教えとして、今でも語り継がれている。そして講義後半では、絶対的勝利の条件として、自軍の状態、敵の状況、地形など5つの要素を挙げ、リーダーとして持つべき部下への配慮とともに解説する。(全3話中第3話)
時間:10分28秒
収録日:2020年10月9日
追加日:2026年4月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●「逆命利君」と「従命病君」――漢の時代から伝わる重要な教え


 ここで少し考えたいと思います。君主の命令に逆らっていいのかどうかという、そういう論議がかなりあります。ここに漢の時代の劉向という人が書いた『説苑(ぜいえん)』という書物がありますが、日本でもいろいろなところで応用されており、年号などにも非常に関与している書物です。

 そこに「逆命利君」という言葉が出てきます。これは私の若い頃に非常に流行った言葉で、「逆命利君、謂之忠(之を忠と謂ふ)」というものです。逆命利君とは、命に逆らって、利を君主に差し上げるということです。君主の命令に逆らって、利を上げて、それを君主に上げる。これを忠ということです。

 これに併せて書いてあるのは、「従命病君」です。つまり、君主の命令に逆らわないで、「はい」と言い、もう戦ってはいけないというときにもかかわらず、(例えば)戦略が確立されていない、確立しない、勝つ見込みがないというときに、(君主が)「戦え」と言っているから「戦います」と言うのは、病すなわち弊害を君主に上げることなのです。これを、「諛(ゆ)」といって、おべんちゃらの臣だというのです。

 ですから、そういう意味で、漢の時代からということは、キリスト教世紀の頃から、中国の戦略論には「逆命利君」のほうが重要だということです。やはり、結果がどうなっていくのかが重要だといっていることは、われわれも頭に入れておく必要があります。要するに、本社が何と言おうと、やはり支社長としては、駄目なものは駄目で、やめたほうがいいということを貫けといっているわけです。


●部下への配慮で犯しやすい過ち


 では次、「卒を視ること嬰児の如し、故に之と深谿(しんけい)に赴く可し」です。将軍が兵士を見るときに、自分の子ども、それも嬰児ですから、赤ん坊を見るように愛情深く見るということです。「故に之と深谿」とは、危険を冒して深みまで一緒に行っても大丈夫ですといっているわけです。つまり、ここでは、部下との関係は非常に重要で、これもいっておかなければならないということで、孫子がここでいってくれているわけです。

 反対に、「卒を視ること愛子の如し」は、卒をみることでも、今度は「愛子の如く」といって、愛情がたっぷりすぎて、守ってやるという観点がないのです。だ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(序)『ばけばけ』と『神国日本』
ラフカディオ・ハーンの遺著『神国日本』の深い意義とは?
賴住光子
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(8)10分解説!第二の人生の仕事革命
年金の「働き損」解消時代!第二の人生を充実させる方法とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(5)SNS社会と「二宮尊徳的」時代の終り
「既読」への不安…SNS社会にみる日本社会の混乱の要因
與那覇潤
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
新撰組と幕末日本の「真実」(8)戊辰戦争~明治期の新撰組の魂
受け継がれる魂…戊辰戦争での奮戦と自由民権運動の情熱
堀口茉純
高市政権の進むべき道…可能性と課題(2)財政戦略3つの問題点
高市政権の財政政策の課題は…ポピュリズム政策をどうする?
島田晴雄
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(5)美の裏に潜む恐ろしい側面
恐ろしい日本…常に何者かに見られ、個性が抑圧される社会
賴住光子
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(4)脳の構造と特徴
「脳のしわが多いと頭がいい」は誤解…ヒトの脳の特異点
毛内拡
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子