昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編
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玉砕したアッツ島の絵を毎朝拝んでいた樋口季一郎…司令官の苦しみ
昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編(2)司令官の決断と苦悩
アッツ島の悲劇を繰り返さぬよう、樋口季一郎が下した決断はあまりに異例だった。軍旗同然の小銃を海へ捨ててでも、キスカ島から5,000名以上の将兵を救い出す。この「奇跡の撤退」の裏には、人命を最優先する揺るぎない信念と、米軍の心理を読み切る卓越した洞察力があった。だが、それは同時に、アッツ島の人命を犠牲にして、キスカ島の人命を救う決断でもあった。戦後、彼が欠かさなかった習慣から、「司令官の苦しみやつらさ」が伝わってくる。名将の知られざる真実に迫る。(全4話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:7分59秒
収録日:2019年7月30日
追加日:2026年5月22日
≪全文≫

●歩兵銃を海中投棄してよし…成功のためにすべてを集中させる


―― 米軍はむしろ撤退したことをまったく気づかずに、上陸作戦を敢行したと。

早坂 もう無人島になっているキスカ島に何千発という砲弾を撃ち込んでいたのですね。撃ち込んだあとに上陸して、見たら、日本兵が一人もいない。日本兵が飼っていた犬が何匹かいたらしくて、「私たちはこの犬に何千発も砲弾を撃ったのか」という話があったりします。

門田 よく当たらなかったよね。

早坂 あと、日本文学者でドナルド・キーンさん、あの方がキスカ島の戦いに通訳として従軍していたのですね。キスカ島に上がったら、――日本兵がいたずらでやったともいわれているのですけれど――小屋があって、そこにペストの患者収容所のような看板を掛けておいたのです。それをキーンさんが訳したら、米兵がパニックになったという、そんな逸話もあります。これは一つの、本当に奇跡のような日本軍の成功例です。

 だから、樋口季一郎としては2600人のアッツ島の兵士たちは確かに救うことができなかった。けれど、キスカ島5200人の兵士の命を救うことができた。というのがキスカ(島)の戦いの概要ということになると思います。

門田 だから、命だけを救うのだということで、陛下から下賜された小銃、これを海中投棄してよしと。

早坂 そうです。三八式の歩兵銃を、持っていると船に乗るのが遅れるわけです。だから、それはもう捨てていいと樋口は指示したと。これも後日、だいぶ怒られたらしいのですけれど。

―― 普通に考えると、ふざけんなと。

早坂 ええ。これはあり得ない話なのです。

門田 これを海中投棄せよという命令は、なかなか出せませんから。それをちゃんと出していますからね。

早坂 そうそうできる決断ではないと思いますね。

―― その目的を明確にした場合、どうすればそれが実現するか。あらゆる障害を排して、そこに集中させるということですね。

早坂 そういう意味では、オトポール事件に通ずる樋口の人間性は、そういったところから垣間見られるのじゃないですか。その道義的な部分、しっかりと正確に判断していくという部分が非常に強かったのじゃないですかね。


●戦後もずっと樋口の心の中には常にアッツ島があった


―― プランナーというか、物事を動かしていく能力としてはそういうこともあります。もう一方で、当...

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