政策研究大学院大学とは
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
卒業生は本国の中央省庁で活躍、いずれは市長や県知事も
政策研究大学院大学とは(1)世界の中堅官僚が政策を磨く
白石隆(公立大学法人熊本県立大学 第3代理事長/国際政治学者)
白石隆氏が学長を務める政策研究大学院大学(GRIPS)には、東南アジアを中心に優秀な人材が集まり、各国で活躍する中堅官僚の受け入れも増加している。近年、中国、ヨーロッパもこぞって人材を送り込んでくる政策研究大学院大学の特長を、白石氏が三つのポイントに絞って解説する。(前編)
時間:8分59秒
収録日:2015年1月21日
追加日:2015年4月13日
≪全文≫

●教育の基本は「定量化」という発想


―― もともと、政策研究大学院大学というのは、誰の発想からできたのですか。

白石 吉村融先生という、今はもう80歳を過ぎた先生がおられまして、この方が設立されました。もともとは埼玉大学の先生で、1960年代半ばにアメリカに往訪されたのですが、その当時、行動主義革命という概念がありまして、これは何かというと、いろいろなデータをできる限り統計的に処理して物事を考えるという、オペレーションズ・リサーチのような考え方です。

 もちろん、定量的に考えられないことはいくらでもありますが、定量的にできることは、どんどん定量化していこう、という発想です。そして、そのような発想で政策を考え、新しいタイプの政策人材を教育するということが、ちょうど当時のアメリカで始まっていて、それが日本でも必要だということで政策研究大学院大学が始まりました。吉村先生が本当に一生を懸けてこの大学を創られたのです。

―― すごいですね。

白石 1997年にこの大学ができまして、今の六本木に移ってきたのは、2005年です。ここはご承知の通り、戦前は二・二六事件で有名な近衛連隊があった所で、本部がここにあったのです。そして、戦後は、東京大学の生産技術研究所と物性研究所がありましたが、それをうちが引き継いだということになりました。

 ですから、日本人にはあまり言いませんが、特に外国人の要人が来たときには、「かつてここはクーデターの本拠地だった。しかし、われわれは平和裏にやる」という言い方をしています。


●ODAも下火になり、教育モデルの転換が必要になる


白石 では、結局、どうして1997年に政策研究大学院大学ができたのかというと、ご承知の通り、当時はまだODA(Official Development Assistance、政府開発援助)が非常に盛んでした。

―― 日本が圧倒的に援助していた時代ですね。

白石 そして、やはり日本の力もまだ非常に強い時代でした。そのような中で、ODAのお金を使って、外国の中堅の官僚に日本の成功体験や、少しは失敗体験も教えましょう、というのが、最初の発想だったのです。

 私自身が学長になったのは2011年ですが、その頃になりますと、当然のことながら、日本のODAはもちろん下がっていますし、日本の力も残念ながら長期的にはな...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司

人気の講義ランキングTOP10
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(3)健康産業イニシアティブ実装に向けて
使えるデータで「健康のプラットフォーム」を実現しよう
小宮山宏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」
変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人
水野道訓
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(3)戦狼外交の戦略と思惑
戦狼外交で国際秩序に挑戦…戦術的な微笑外交で見誤るな
垂秀夫