現代人が幸福になれない原因は、肉体的な安楽や快適さを「幸福」と混同している点にある。幸福は肉体とは一切関係がなく、純粋な「精神のエネルギー」なのだ。病や過酷な環境により肉体がいくら苛まれても、その底にある苦悩や不幸と対峙することでこそ、真の幸福や命の輝きが湧き上がってくる。信仰を遠ざけ、試練を避けて肉体を重んじる物質至上主義の現代社会は、この真理を見失い、精神的に衰退してしまった。真の幸福を掴むためにはどうすべきか。ウナムーノの『生の悲劇的感情』から問い直す。(全10話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツ・アカデミー論説主幹)
≪全文≫
●幸福に「肉体が関与している」と思うのは間違い
執行 次です。「幸福とは、精神のエネルギーなのだ」と。幸福は精神だけのエネルギーなのです。これに気づいてほしい。
―― なるほど、精神だけのエネルギー。
執行 はい。精神だけのエネルギーです。肉体が関与していると思ったら、幸福論は全部間違えるから。
―― 精神だけですね。
執行 はい。今は肉体も幸福になれる1個だと思っているから、全員が間違えるのです。肉体は、幸福論には全く入っていない。
―― なるほど。
執行 幸福感というのは、その人の精神が感知するだけのもの。だから、肉体的にはとんでもなく苦しい人生を送ろうが、病気の人生だろうが、または家族の病気の看病だけのような人生だろうが、歴史上はものすごい幸福感を味わっている人は多い。死ぬ日までただただ苦しむだけの人生だったという人も、私はたくさん知っているし、過去に(読んだ)本の上でもたくさん知っている。でも、本当に幸福な人生をその中で送った人もたくさんいる。
肉体から離れられない人は、肉体がもし悪かったり、痛いとか痒いとか病気を持っていたりすれば、不幸でしょう。でも、現実的に私もそうだけれど、肉体の悪いところが多くても、肉体に関係なく、ものすごい幸福感しかない。(その理由は)何かというと、精神だからです。
―― そこは精神のエネルギーだと。
執行 そうです。これは本当のことなので、絶対に信じてもらいたい。今、なかなか幸福を得られない人がいたとする。それは、絶対にその方は肉体の幸福も一緒に幸福だと思っているということなのです。だから、(それは)肉体的安楽です。
―― なるほど。
執行 肉体が気持ちいいとか、楽だとか。だから、今の幸福感は肉体が伴っているから、誰も幸福になれないのです。肉体を幸福にしようとしているから、温泉とか旅行とか行くのです。でも、それで本当の幸福感として満足する人はいないのです。
(だから)、先ほど言ったダミアン神父が得た、本当の幸福です。今、私が感じている幸福もそうです。そういうものを得られる人はいない。うちの親父もそうです。肉体は逆に苛むほうが幸福の場合が多いのだから。仕事だって、たくさんやるということは苛むということだから。
―― そうでしょうね。
執行 親父の一生を知っている人は、「あんな仕事だけで不幸な人だったね...