中東のパラダイムシフト
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
友にして敵なのか、敵にして友なのか―中東の複雑性
中東のパラダイムシフト―「敵の敵は友」か?
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
中東情勢に詳しい歴史学者・山内昌之氏は、「敵の敵は友」といった単純な構図では到底中東の複雑性は語れないと言う。このような混迷の中、中東ではパワーシフト、イデオロギーシフトが起きている。ソ連解体の構図、ハンチントンの文明内衝突などを例に、歴史を自在にまたぐ山内氏ならではの視点で、中東のパラダイムシフトを考える。(シリーズ講話第1話目)
時間:18分08秒
収録日:2015年3月11日
追加日:2015年3月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●「敵の敵は友」と言いきれない中東の複雑性


 皆さん、こんにちは。本日は、21世紀の中東をどう捉えたらいいのか、あるいは、中東でいま起きている大きな権力の移動、ひいては、どう捉えるかというパラダイムやパワーのシフトなどについてお話ししてみたいと思います。

 よく中東においては、「敵の敵は友」という言葉が使われます。しかし、私は、これは中東情勢や権力関係を著しく単純化しているものだと思います。実際の中東はもう少し複雑であり、私はいつも「敵の敵は友か、さもなくば敵か」と、このように言うべきではないかと思っていました。しかし、最近のIS(イスラム国)をめぐる諸国や諸勢力の相互関係を見ると、これでもまだなかなか中東の複雑さを言い表したことにはなりません。

 特に、最近のオバマ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相との関係、あるいは、アメリカ政府が進めているイランとの核開発に関わる交渉や、これをめぐるアメリカ・イラン・イスラエルの三国間の関係を見ましても、「敵の敵は友か、さもなくば敵か」と表現しても、まだ単純であるかのように思えてきます。むしろ、その後に私は次のような言葉を付け加えてみたいと思うのです。「さもなくば友にして敵なのか、敵にして友なのか」ということです。すなわち、有名な言葉はこう置き換えられるべきなのではないかと、私は最近よく思うようになりました。「敵の敵は友か、それとも敵か、さもなくば友にして敵なのか」と。恐らく、中東情勢はこのような形ですこぶる混迷と複雑さを増しているかと思われます。


●中東のイデオロギーシフトとソ連崩壊過程の比較


 現在起きているのは、前回お話しする機会もあった大きなパワーシフトと、それから、今日お話ししていくことになるイデオロギーレベルのシフトが大きいかと思います。そこで最初に触れるべきことは、中東秩序の古いシステムが崩壊しつつあるということが第一点です。このことを、あえて歴史的に理解しやすく説明するとすれば、1991年のソ連の崩壊と比較することもできるかと思われます。それから、その後の冷戦終結とソ連の解体後に新しく出現した東欧や中欧における大きな政治の構図なども念頭に置くと、よく分かる点もあるかと思います。

 例えば、チェコスロバキアがチェコとスロバキアに分離していった平和的な分離モデルもありました。あるいは、ラトビア...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治