中国古典思想に学ぶ~そのエッセンスとは
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
水牛に突き刺され生死をさまよった男が出会った「老子」
中国古典思想に学ぶ~そのエッセンスとは(3)老荘思想との出会いと学ぶことの醍醐味
田口佳史(東洋思想研究家)
中国古典思想研究を老荘思想からスタートさせたと話す老荘思想研究者・田口佳史氏。そのきっかけは25歳の時。タイのバンコク郊外で生死の境をさまようほどの重傷を負う中、『老子』に出会ったという。中国古典思想を中心とする東洋思想研究を47年間続けた田口氏が、老荘思想との出会いと中国古典思想を学ぶことの醍醐味について語る。(全3話中第3話目)
時間:11分00秒
収録日:2014年10月29日
追加日:2015年6月11日
≪全文≫

●生死の境をさまよう中、『老子』に出会う


 江戸の末期、基礎教育として四書五経を受けた人たちが、明治という近代国家をつくり上げたわけで、これは相当なことだと思うのです。内憂外患を収め、さらに近代国家を建設する力は、一体どこからきたのかといえば、やはり幼年時代に培った中国古典の四書五経の教えにあり、それが血となり肉となって、彼らの一働き、二働きを支えたと思います。

 そういう意味で、私も中国古典思想が血となり肉となっているのですが、実はスタートは老荘思想からでした。そのきっかけは、私が25歳の頃、ジャーナリストとして、タイのバンコクへ行ったときのことです。朝の8時頃でしたが、取材地であるナコンパトムへ猛スピードで向かっていました。そこには、滑走路になるという一丁ほどのアメリカンハイウェイが走っていたのですが、見渡す限りきれいな田園地帯で、そこでたまたま、体が和牛の2倍ぐらいあり、角も立派という水牛2頭が、小さな子どもに引っ張られて脱穀をしていました。それは、家の前の小さな田んぼの中での光景でした。

 「あれはいいな。あの水牛をカメラに収めていこう。ちょっと待っていてくれるか」と言って、そこで車を止め、ずかずかと田んぼに入って、その水牛を写真に撮ろうとしていたのです。結果から言うと、その時、私は、その水牛2頭の角で串刺しにされました。水牛は刺すと跳ね飛ばす習性がありますから、跳ね飛ばされた私の体は裂けてしまい、内臓から何から全部出てしまいそうなひどい状態でした。

 そんなことで、病院へ担ぎ込まれて、生きるか死ぬかという、生死の境を行き来する状態が続いたのですが、そのさなかに、在留邦人の方が、「そろそろ退屈しているだろうから、何か本でも差し上げたらどうか」ということで、いろんな本を貸してくださったのです。その中に『老子』と『論語』があったのですが、特に『老子』を読んだ日は、とても落ち着きました。それまでは、寝ると翌朝にはもう目覚めないのではないか、寝ることは死を意味するのではないかと、死への恐怖を非常に感じて、眠ることが怖かったのです。ですから、なるべく眠らずにひたすら目を大きく開いていたのですが、そんな時に『老子』を読むと、何かさっぱりして、「ああ、今まで寝ていたのか」と目覚めた時に自分が寝ていたことも忘れるくらい熟睡することができたのです。それは、熟...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子