安全保障のチャイナリスク対応
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
有事になったら、海上保安庁と自衛隊の関係はどうなるのか
安全保障のチャイナリスク対応(5)質疑応答
吉田正紀(元海上自衛隊佐世保地方総監/一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員)
前海上自衛隊佐世保地方総監・吉田正紀氏の安全保障分野におけるチャイナリスクへの対応に関する講演が終了し、会場からの質疑応答となった。参加した経営者やビジネスマンは、わが国の安全保障の最前線の元指揮官に対してどのような疑問をぶつけたのだろうか。(2014年12月1日開催日本ビジネス協会インタラクティブセミナー講演より、全5話中第5話目)
時間:11分25秒
収録日:2014年12月1日
追加日:2015年7月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●中国漁船衝突事件への対応は正しかったか


―― 民主党の時代に向こうの漁船が来て、巡視船に体当たりした事件がありました。不法侵入だから当然逮捕したものの、あの時、民主党政権はすぐに船員も船長も帰してしまいましたね。あれは、今日の先生の戦略のお話にあった「不敗不戦」の定義からすると、やはり正解だったということなのでしょうか。

吉田 正確に申し上げますと、あの時は「すぐに帰さなかったから失敗した」のです。あの事件をもう一度振り返りますと、あれは公務執行妨害で逮捕しました。公務執行妨害による逮捕は、海上保安庁のレギュレーションとしては適切でした。逮捕の後の経緯について、実は私はあの頃と今回慶應義塾大学で教鞭をとる際に、もう一度シミュレーションして、勉強し直してみました。

 事件が起こった9月7日は、小沢一郎氏と菅直人氏の代表選が行われていた最中だったため、仙谷由人官房長官が指揮をとり、「政治的な空白期間」を埋めました。彼は弁護士で、法律のプロですから、法案に従って粛々と手続きを進めたのです。

 あの時の中国は、毎日のように連続してカードを切ってきました。夜中にわざわざ大使を呼びつけるなどの行為があって、レベルを上げながら各所にメッセージが送られていたのです。


●必要とされていたのは政治的配慮


吉田 その源は、小泉政権の頃に起きた中国人活動家の尖閣上陸事件にありました。彼らを解放する際に、小泉政権は明確に「政治的な配慮による」と言いました。それに比べて2010年の場合は「政治的に配慮がない」というのが中国側の見方になるのです。

 中国では「日本の陰謀だ」という説も飛び出したぐらいです。結局、19日に船長の拘留延長の決定が出ると、中国側は無視されたと思い、切ってくるカードがどんどんエスカレーションし始めます。

 ただし、軍事的なカードを切るのは危ないので、水平走行の方です。先ほどの講演で触れたように、戦略をエスカレーションするにも垂直方向と水平方向があります。中国人観光団の規模を縮小したり、日本人大学生の上海万博招致の中止を通達したり、レアアースの輸出を差し止めたり、日本企業の社員を不法撮影で拘束したり。違う分野の水平軸で、エスカレーションのラダーを違う分野で上げていっていたのです。

 それを全く理解できていなかったのが問題で、実はあの時に帰さなか...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
『「甘え」の構造』と現代日本(2)日本人の自責意識と自由の限界
「Thank you」か「I am sorry」か…日本人の癖とは?
與那覇潤
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生