安全保障のチャイナリスク対応
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
海中資源ニーズが高まる中、中国は海洋権益の確保を目指す
安全保障のチャイナリスク対応(3)海洋進出の狙い
政治と経済
吉田正紀(元海上自衛隊佐世保地方総監/一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員)
21世紀を海洋の世紀と位置付け、「海洋強国」を建設すべきだと盛んに提唱している中国。彼らは、アメリカとの全面対決が避けられない海の覇権へ向かうのだろうか。前海上自衛隊佐世保地方総監・吉田正紀氏が中国の活発な海洋進出の中長期的な狙いを分析する。(2014年12月1日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演より、全5話中第3話目)
時間:16分25秒
収録日:2014年12月1日
追加日:2015年7月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●最大の動機は経済発展のための海洋権益確保


 安全保障分野におけるチャイナリスク、あるいは中国との「長い灰色の戦い」の実態を紹介してきましたが、なぜ中国がこのようなことをやるのかと言うと、中国の海洋進出には三つぐらいの狙いがあります。

 一つは、経済発展のための海洋権益の確保と言われています。例えば国連が「この海域に石油や天然ガスが埋蔵されている可能性がある」と発表すると、翌年には領有権を主張し始めたりするところから、そうではないかと言われています。日本でもメタンハイドレードが「燃える氷」と注目されているのと同様です。

 従来、海の資源といえば漁業ぐらいしかなく、あとは交通の場としての意味しかなかったのですが、科学技術が進んできたために、こうした問題まで出てきました。経済発展が国(共産党)を支える中国としては、長期的にみて非常に重要になる海洋権益の確保にも早めに着手しなければいけないという発想だろうと言われています。


●防御縦深は「人民の海」から「近海防御戦略」へ


 もう一つは、国土防衛のための防御縦深拡大です。

 中国のメンタリティには、海洋権意識の希薄化が列強の侵略を招いたとの反省があります。要するに、「万里の長城」が示す通り、それまでは常に陸側に意識が向いていた。北方民族に侵されたり、南方の異民族が来るというので、常に内陸を見ていた。油断していた後ろ側から来られたのが、アヘン戦争や日清戦争だというのが、彼らの教訓とする「海洋意識の希薄化」なのです。

 また、毛沢東の頃は人民戦争ですから、「人民の海に敵を引きずり込む」ゲリラ戦が強調されました。日本軍も苦しめられた戦法ですが、これが毛沢東の戦争のやり方でした。

 貧しいときはこれでよかったのですが、改革開放政策を行ったために、上海などの沿海部から順に経済発展を遂げました。そこをどうするのか。引きずり込んだら、都市がやられてしまう。

 「では、前に出そう」と「近海防御戦略」を言い出したのが、劉華清という海軍司令員でした。戦略家として非常に立派だと思います。まだ海軍にあまり力のなかった当時、この理論を打ち立てたのが立派だと、私は思うのです。容貌はちょっと坂田師匠に似ていますが(笑)、長男が海軍中将までいっています。


●経済発展に伴い広がる中国海軍の戦略目的


 ともあれ、中国は1980...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎