書物で学ぶギリシャ危機
この講義シリーズの第1話は
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ジェームズ・リカーズ「ドル消滅」で考えるギリシャ危機
書物で学ぶギリシャ危機(3)リカーズと有馬龍夫
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ギリシャ危機を考える上で示唆的な書物として、歴史家の山内昌之氏が前回選んだのは、エマニュエル・トッドの『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』だった。今回は、それとは異なる見方で、全米ベストセラーとなったジェームズ・リカーズの『ドル消滅』を取り上げる。さらに、ドイツ統一から欧州共同体の設立を見届けた元ドイツ大使有馬龍夫氏の著書『対欧米外交の追憶 上下』を紹介することで、ギリシャ危機に新たな活路を見出すためのシリーズを締めくくる。(全3話中第3話目)
時間:12分29秒
収録日:2015年7月16日
追加日:2015年8月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●トッドと逆の立場を取るリカーズの『ドル消滅』


 皆さん、こんにちは。前回のエマニュエル・トッドの議論とはまた異なる見方で、今のギリシャ危機を考えていく手がかりになる書物を、いくつか紹介してみたいと思います。

 朝日新聞出版から2015年6月に翻訳が出た、ジェームズ・リカーズの『ドル消滅』という書物があります。この書物は多くの点でエマニュエル・トッドと反対の立場を採っています。

 ジェームズ・リカーズは、ギリシャならドラクマ、フランスならフランといった個別通貨に戻り、輸出競争力を高めるために貨幣の平価切り下げを実行すべきだという問題解決策に対して、非常に消極的です。

 個別通貨の切り下げは、ヨーロッパをはじめ世界の国々がこの間に採ってきた経済政策です。しかし、こうした政策こそが貯蓄者や小企業の経営者を犠牲にし、国家が自由競争を承認する方法である。リカーズの大変手厳しい言葉を借りますと、「(国家による)盗みに他ならない」ということになるのです。

 つまりリカーズは、ユーロというつくられた共通通貨と各地(現在ならばギリシア)とが補い合うような点に、EU各国ひいてはEUの将来があると主張しているわけです。


●「さらなるドイツ化」と南ヨーロッパの労働事情


 ドイツのアンゲラ・メルケル首相が言った、「さらなるヨーロッパ統合」という有名なスローガンがあります。これに対して、「最近見えてきたのは、さらなるヨーロッパ統合ではなく、さらなるドイツ化、ドイツへの統合ではないか」という説が出てきています。

 ジェームズ・リカーズも、先のスローガンは「さらなるドイツ化を目指す」言葉ではないかと指摘しながらも、ギリシャやスペインのような国においては、単位労働のコスト引き下げを含む効果的な労働力の実現がなかなか難しいことも認めています。

 つまりリカーズは、ユーロ導入による名目賃金の引き下げによって内的調整を図るのは簡単ではないことを冷静に見極めているわけです。例えばギリシャをはじめとする南ヨーロッパ、イタリアやスペインのような国々では、そもそも一度も就職を経験していない若者たちが増えています。

 ちょうど本日(2015年7月16日)、ギリシャに対する金融措置支援に関する諸条件について、ヨーロッパが法制化を要求しました。ギリシャ政府がそれを認めたところ、アテネで...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
小原雅博
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
経済社会と「隠れた価値」の行方(1)経済の中の価値
人間の幸福と「価値」…お金以外の「隠れた価値」をどう考えるか
吉川洋
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
アメリカの理念と本質(1)西洋文明の行き着いた先と三つの建国
アメリカの理念と本質とは?…まず「三つの建国」から原点に迫る
中西輝政

人気の講義ランキングTOP10
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(3)孤食リスクと加齢に伴うホルモン変化
「孤食」が危ない…独身男性の一人の食事はうつのリスク2倍以上に
小川純人
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
「満洲」から考える日本とアジア(8)日貨排斥と満洲事変の原因
なぜ満洲事変が起きたか…激烈な日本排斥と朝鮮人迫害、さらに一方的な条約無効化に直面した日本人の決断と失敗
宮脇淳子
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
心と感情の進化(1)そもそも「心と感情」とは何なのか
「心と感情」とは何か、行動生態学から考える大事な問題
長谷川眞理子
日本の財政の真実を検証する(1)膨らむ借金の知られざる実態
日本の財政の「真実」をデータで徹底検証…国際機関の分析は?
宮本弘曉