書物で学ぶギリシャ危機
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
エマニュエル・トッドが示したフランス再生のシナリオ
書物で学ぶギリシャ危機(2)ユーロが見せた影の側面
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏が、ギリシャ財政金融危機および共通通貨ユーロの影の側面について解説する。人類学者E・トッドの指摘によればドイツはユーロをフル活用した国と言えるのだが、そこから生じた共通通貨ユーロの闇とは一体どのようなものなのか? 現代の問題を歴史的観点から捉え直す山内氏の異色経済講義第二弾。(全3話中第2話目)
時間:10分48秒
収録日:2015年7月16日
追加日:2015年8月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●古代ペルシャ人が示した二つの人間の過ち


 皆さん、こんにちは。今日は前回に引き続き、ギリシャを襲っている財政金融危機の問題について考えてみたいと思います。

 前回も少し紹介したローマの時代に活躍したギリシャ人、プルタルコスは、『モラリア(倫理論集)』に収められている「借金をしてはならぬことについて」という有名なエッセイにおいて、私にとっても大変興味深いことを指摘しています。

 それは、古代のペルシャ人についてです。古代のペルシャ人は、二つ、人間の過ちとして大きいものがあると言いました。その軽重の順番でいうと、第二番目、つまり軽い方の過ちは、嘘をつくことである。それでは一番目に重い過ちは何かというと、ペルシャ人たちは、借金をすることだ、と述べたというわけです。この点でいきますと、これはペルシャ人というよりも、現代のギリシャ人ではないかという気になります。やや酷な言い方でありますが、そのように置き換えてもいいのではないかと思います。

 今世紀に入ってから発覚した、EU加入条件において、国家債務のパーセンテージについて嘘をついて加入しおおせたという、このこと。つまり、国が借金をたくさん背負っているという事実を隠した。それは嘘をついたということです。つまり、古代のペルシャ人たちが言ったことを紹介している自分たちの祖先プルタルコスの『モラリア』における指摘がそのまま当てはまっているのが今のギリシャ人だといえば、あまりにも酷でしょうか。


●ユーロを発明したフランス、活用したドイツ


 しかしながら、こうしたギリシャの問題について、私たちは歴史として見ていく場合に、ギリシャだけが果たして非難され、批判されるべきなのかという、現代資本主義の大きな命題にも突き当たることにもなります。その点を多面的に理解するうえで、シリーズ第2回目の講義におきましては、私とともに皆さんにも参考になるいくつかの日本語に訳されている書物などを、少し紹介してみたいと思います。

 その一つは、最近翻訳で紹介されました、フランスの人類学者、社会学者であるエマニュエル・トッドの、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』という書物であります。文春新書から出ているこの本は、そもそもこのユーロという共通通貨が、ドイツの利益に奉仕する貨幣に成り下がったという厳しい主張から成り立っています。そして、フ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹

人気の講義ランキングTOP10
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
クーデターの条件~台湾を事例に考える(4)クーデター後の民政移管とその方策
軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか
上杉勇司
世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神
ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか
早坂隆
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
未来を知るための宇宙開発の歴史(12)宇宙推進技術はどこまで進化したか
水平離着陸で宇宙へ、近未来のロケット像と進む技術開発
川口淳一郎