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DATE/ 2018.11.01

日本の携帯料金は世界で一番高いって本当?

 「日本の携帯料金は、世界的に見ると高い」と言われることがしばしばあります。2018年8月には管官房長官が携帯料金の4割値下げを提言したニュースや、同年9月に行われた沖縄知事選挙では「携帯料金4割削減」の公約が出されたニュースなどが話題を呼んだことも、記憶に新しいですよね。

 しかし、この提言に対して携帯電話大手からは「日本の携帯料金は特別高いとは感じない」という反論の声も上がっています。日本の携帯料金は本当に高いのか、それとも高くないのか、その論争には決着はついていません。今回はその実態について紹介していきましょう。

パリと4.2倍も違う!?東京の携帯料金

 2018年9月に総務省が発表した「電気通信サービスに係る内外価格差調査(平成29年度)」では、東京のほか、ニューヨーク、ロンドン、パリ、デュッセルドルフ、ソウルの世界6国の各都市の携帯料金を、スマートフォンの月々のデータ容量別に比較した結果が掲載されています。今回はユーザーシェアの多い事業者の料金プランを比較したデータを参考にして考察していきましょう。

東京
2GB/5942円 5GB/7562円 20GB/8642円
ニューヨーク
2GB/5990円 5GB/5990円 20GB/8129円
ロンドン
2GB/2444円 5GB/2444円 20GB/4330円
パリ
2GB/1783円 5GB/1783円 20GB/4922円
デュッセルドルフ
2GB/3786円 5GB/3786円 20GB/5049円
ソウル
2GB/3757円 5GB/4445円 20GB/5521円
※日本を除く5カ国の平均
2GB/3552円 5GB/3690円 20GB/5590円

 上記の比較を見てみると、確かに他の国と比べて日本の携帯料金が高いことがわかります。2GB、20GBのデータ容量では、ニューヨークと並んで他の国に比べて割高だということがわかりますが、もっとも差が開いたのが5GBのデータ容量。もっとも低価格のパリは1783円であるのに対して、日本では7562円と、なんと約4.2倍の金額になっています。この調査結果が日本の携帯料金は高いという意見の根拠になっているのだと思われます。

 これだけ差が出るのは「携帯電話市場が3社によって独占されているため」と指摘する専門家もいます。今では携帯料金が低価格のフランスも、かつては3社が寡占状態でしたが、第4の会社「Free」が現れて低価格でのサービスを始めたため、結果的に全体の価格が下がったと考えられているのです。こうした意味では、日本でも2017年12月に楽天が携帯電話業界への参入を発表しており、これが業界にどんなインパクトを与えるのかは未知数となっています。

単純な比較は難しい一面も

 その一方で忘れてはいけないのは、国によってサービス内容やプランの条件が異なるために、比較するのは難しいということ。各国、各携帯会社でどんなオプションをつけているか、細かく精査して比較するのはそう簡単なことではありません。また、日本のネットワーク品質は世界的にも品質が高いので、携帯料金が他国より高いとしても、それ相応のサービスを受けられているという意見もあります。

 ちなみに、同調査では国内シェア上位3事業者が提供するプランのうちもっとも安いプラン、フィーチャーフォン向けのプランを対象とした調査も行われていますが、前者は他国と比べて2GB・5GBは中水準、20GBでは高水準となっており、後者に関しては、他国と大きく変わらない低水準の料金となっています。そのため、日本の携帯料金が一番高いと断定することはできないのではないでしょうか。

 簡単には結論がでない「日本の携帯料金は高いのか?安いのか?」という問題。あなたはどう思いますか?

<参考サイト>
・総務省:電気通信サービスに係る内外価格差調査(平成29年度)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000574456.pdf
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