テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.11.14

「おせんべい」と「おかき」の違いとは?

 お茶請けに欠かせない米菓といえば「おせんべい」と「おかき」。このふたつの違いは何か、考えたことはあるでしょうか? 今回は「おせんべい」と「おかき」の違いや、米菓の歴史について解説します。

一番大きな違いは原料

 「おせんべい」と「おかき」で、最も異なるのが原料です。「おせんべい」は私たちが普段主食としている、うるち米からできています。いっぽう、「おかき」の原料はもち米です。「おかき」は別名「かきもち」とも言いますので、そこから連想すると覚えやすいでしょう。

供えもちを欠き割った「おかき」

 古くから神さまに五穀豊穣を祈ってきた日本人は、お米がとれるとその感謝のしるしとして神さまにお米をお供えしました。特にうるち米よりも日持ちのするもち米は、お供え物にぴったり。お正月や節句のお祝いにもちを飾るのも、その風習のなごりです。

 供えた後のもちを槌(ハンマー)で欠き割り、火で調理したものが米菓のはじまりだといわれています。欠き割ったもち、すなわち「欠きもち」を「おかき」と呼ぶようになったのです。

 「おかき」と「あられ」の違いですが、もちを火で焼いたものが「おかき(かきもち)」、炒ったものが「あられ」の起源といわれています。ただ現在ではシンプルに大きな形のものを「おかき」、小さな粒型のものを「あられ」と呼び分けることが一般的。大きさの違いに明確な線引きはないようです。

 「あられ」という名は、煎る時に音を立てて跳ねあがるようすが、空から降ってくる「霰」の形に似ていることに由来するといいます。奈良時代では、客人をもてなすための高級菓子として利用されました。また「あられ」とは主に関東圏の呼称で、関西では「あられ」も「おかき」と呼びます。

もとは小麦粉で作られていた「おせんべい」

 いっぽう、「おせんべい」の起源には諸説あり、一説には煎餅(ジェンビン、チョウピン)というお菓子を、唐(中国)に渡った弘法大師・空海が気に入って持ち帰ったのが始まりだといいますが、はっきりしていません。ただ中国で餅といえば、お米ではなく小麦粉を練って薄く焼いた食べ物で、今のお好み焼きやクレープ生地に近いもの。また、当時の日本人はこの「煎餅」を「いりもち」と読み、小麦粉を練って油で煎った菓子にこの「煎餅」の名を当てたと考えられています。つまり当時のせんべい(煎餅)は、油で揚げた小麦粉のお菓子でした。

 うるち米を使った、しょっぱいせんべいが作られはじめたのは1600年ごろ。もともとは農家が保存食として、くず米を蒸して丸め、天日干ししたものを塩で味付けし焼いただけの簡素なものだったため、この「塩せんべい」は小麦粉の甘いせんべいと比べると、下級品としての扱いでした。

 しかし五街道の開通とともに各地に宿場町ができて、茶店や土産物屋が軒を連ねるようになると、せんべいが土産物として登場します。草加宿で茶店を開いていたお仙(せん)という名のおばあさんが、売れ残った団子をつぶして焼いて出したことが始まりだとか。

 時代が下るにつれてせんべい用の器具も改良されてゆき、1645年以降の幕末期になって初めて味付けに醤油が使われ始めます。各地で名物せんべいが作られ、明治、大正時代には庶民の味として広く親しまれるようになるのです。

東西で違う「おせんべい」

 うるち米で作った塩や醤油味のせんべいが登場するまで、「おせんべい」は小麦粉に砂糖を入れて練って焼いた甘めのものが一般的で、主に上流階級の食べ物でした。これが現在の「瓦せんべい」のルーツで、今も関西で「おせんべい」といえば、多くの人が小麦粉でつくった甘いせんべいを指します。いっぽうで、関東のうるち米せんべいを「おかき」と呼び慣わしています。

 また、関西では関東に比べると、「おせんべい」よりも「おかき」の消費量が多いようです。これは「おかき」の原料のもち米の産地に近かったことや、神さまへの供物に捧げてきた文化として、寺社の多い関西圏で定着したからとも考えられています。

「おせんべい」と「おかき」。どちらもお米を原料とするものですが、関東関西でのそれぞれの環境の違いから、独自の発展を遂げてきたのです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授