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DATE/ 2019.04.03

億を稼ぐ「ユーチューバー」稼ぎの仕組みとは?

サポート体制が整うユーチューバー

 近年、「ユーチューバー(YouTuber)」という職業が世間で広く知られるようになってきました。ユーチューバーとは動画共有サイトの代表格・ユーチューブにちなんだ呼び名で、自作の動画をネットに投稿して収入を得る職業です。人気ユーチューバーになると億単位で稼げるといわれ、実際にトップユーチューバーのひとりであるHIKAKINさんが最近動画で公開した新居は、初期費用数千万円と推測されるマンション2部屋という豪勢ぶりでした。

 ユーチューバーは基本的に個人での活動となるため、人気が出ても企業と対等に商談ができなかったり、契約を断られたりするケースがありました。そこでこのようなユーチューバーをサポートするプロダクション・UUUMが2013年10月に設立され、現在ではHIKAKINさんやはじめしゃちょーさんのようなトップユーチューバーを中心に、76組が所属しています。UUUMでは所属ユーチューバーのマネジメントはもちろん、著作権などの法的リスクやSNSでの炎上などの風評リスクに関する研修も行って、健全な動画カルチャーの環境整備に励んでいます。

 動画を作るクリエイターであり動画に出演するタレントでもあるユーチューバーは、一種の芸能人なので、このようなサポート体制があると安心でしょう。しかし、一般的な芸能人と違って主な活動場所は誰でも無料で見られるネット動画です。なぜユーチューバーは視聴無料の動画を公開して、収入を得られるのでしょうか。

主な収入源は動画に組み込んだ広告

 実はユーチューバーの主な収入源は広告収入で、そのシステムは「ユーチューブパートナープログラム」といいます。ユーチューバーがこれに登録すると、大手検索サイト・グーグルが提供しているオンライン広告「グーグルアドセンス」を自分の動画に組み込めるようになり、ここから広告収入が発生する仕組みです。

 ユーチューブの広告は主に、ディスプレイ広告(注目動画やおすすめ動画の近く)・オーバーレイ広告(動画再生画面の下部)・動画広告(動画再生前に流れるCM)の3種類があります。ディスプレイ広告とオーバーレイ広告はクリックで、動画広告は最後まで(あるいは30秒以上)再生するかスポンサーサイトへの移動で収入が発生します。

 ユーチューブでの広告単価は、1再生あたり0.1円程度といわれます。ずいぶん少ないようにも感じますが、人気ユーチューバーの中には1億回再生レベルの動画を公開している人や、1000万回再生レベルの動画を何10本も抱えている人がいます。ここまでくると、億単位で稼ぐというのも決して誇張ではないと感じられますよね。

 ただし、ユーチューブで広告収入を得るには一定の条件があります。まず、過去12か月間の総再生時間数が4000時間以上必要です。さらに、ユーチューバー個人のコミュニティとして機能する「チャンネル」の登録者数が1000人以上必要です。ユーチューブ側の発表では、この条件を満たさないチャンネルの99%は年間の広告収入が100ドル(約1万円)未満とのこと。ユーチューバーとして稼ぐことには夢がある一方、現実的にはとても難しいことがよくわかります。

広告だけにとどまらない収入源

 生まれたときからネットとともに育ってきた若者たちの間では、アイドルやお笑い芸人よりもユーチューバーに夢中になる人が増えています。このため、ユーチューバー本人に広告塔としての価値が生まれ、企業と提携して企業タイアップ広告を作成することもあります。これは与えられた広告を組み込むユーチューブパートナープログラムと異なり、ユーチューバー主体の広告です。今後はこのようなユーチューバーのタレント化が進み、活躍の場がどんどん広がっていくでしょう。

 現在でもHIKAKINさんやはじめしゃちょーさんのほか、若者に人気の音楽ユニットでもあるスカイピースさんなどがTV番組やCMに出演しています。あまり見たことのないタレントがTVに出ていると思ったら、ユーチューバーだったという経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。ただし、ユーチューバーは動画の作り手としての意識が強いので、他人が作るTV番組に出演するだけだと物足りなく感じる人も多いようです。やはり、本来の居場所であるネット動画を一番の収入源とする姿勢は変わらないでしょう。

 ユーチューブの本場・アメリカでは、7歳の少年であるライアンくんがおもちゃを開封して楽しく遊ぶ「Ryan ToysReview(ライアンのおもちゃレビュー)」というチャンネルが大人気で、ライアンくんは2018年の6月時点で25億円を稼ぎ、「世界で最も稼ぐユーチューバー」の第1位に輝きました。実はこのような「アンボクシング(開封)」系動画は、そのおもちゃを手に入れられない子どもたちにとって、開封の喜びをバーチャルに体験して欲求を満たす効果があります。

 決しておもちゃで遊んでいるだけで人気ユーチューバーになれるわけではないのですが、楽しくたくさん稼げると感じた日本の子どもたちが、なりたい職業ランキングの上位にユーチューバーをあげるのもうなずけるかもしれません。実際にユーチューバーとして成功することは簡単ではありませんが、それはサッカー選手やアイドルも同じこと。ユーチューバーはたくさんある職業のひとつとして、子どもたちに受け入れられているのでしょう。

<参考サイト>
・日本版 YouTube クリエイター ブログ クリエイターを保護するための YouTube パートナー プログラム(YPP)の新たな変更点に関するお知らせ
https://youtube-creators-jp.googleblog.com/2018/01/youtube-ypp.html?m=1
・Forbes JAPAN 年収25億円の7歳児、世界で最も稼ぐユーチューバーに
https://forbesjapan.com/articles/detail/24229
・ヒカキン新居公開、初期費用は数千万円「ランボルギーニ余裕で買える」「家賃15か月分」 憧れのマンション2部屋賃貸
https://news.careerconnection.jp/?p=66791
・UUUM Creator
https://www.uuum.jp/creator/
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