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DATE/ 2020.11.07

「月の土地」はなぜ売れるのか?

意外とお手頃? 月の土地の相場

 「不動産」という言葉には、利権や欲望が渦巻く生々しいイメージがあるかもしれません。しかしそんなドロドロとした感情とは無縁の、ロマンあふれる不動産があります。それは、月の土地。実は現在、全世界で600万人以上が所有している人気の不動産なのです。

 いきなり「月の土地」といわれると、「ちゃんとした企業が売っているものなの?」と不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、心配は無用です。月の土地の販売は、アメリカ・ネバダ州に本社があるルナエンバシー社がきちんと法律上の許可を得て行っており、日本でも代理店のルナエンバシージャパンが販売しています。

 「でも、月の土地なんて高いのでは?」という疑問を抱く方も多いかもしれません。しかしこちらも心配無用。月の土地は1エーカー(サッカーグラウンド1面分=約1200坪)から購入可能で、金額は29.99ドル、日本円で約3000円というお手頃価格なのです。しかも、月の土地の権利書はもちろん、月の憲法や購入した土地の目印をつけた月の地図などもセットになっています。このスタンダードセットに550円ほど上乗せすれば、専用ファイルやアルミフレーム、携帯用権利書のオーナーシップカードがついたカードセットにすることもできます。

 月の土地は決して遠い存在ではないといえるでしょう。

なぜ月の土地を販売する企業ができたのか

 それではなぜ、月の土地を販売する企業が誕生したのでしょうか。そのいきさつはルナエンバシー社の公式サイトで語られています。

 その説明によると、ルナエンバシー社創設者のデニス・ホープ氏が、月は誰のものなのかと疑問を持ったことがはじまりといいます。ホープ氏は法律を徹底的に調べ、宇宙に関する法律は1967年発効の「宇宙条約」しかないことをつきとめました。この条約のなかで、月は国家の所有を禁じられていましたが、個人の所有を禁じる文言はありませんでした。

 そこでホープ氏は月の土地を合法的に販売しようと考え、1980年にサンフランシスコの行政機関に所有権を申請。正式に受理されます。さらに権利宣言書を国連とアメリカ、旧ソビエト連邦に提出しましたが異議申し立てがなかったため、ルナエンバシー社を設立して月の土地の販売をスタートしたのでした。

 購入した月の土地は、月の憲法によると、「最大10以内の範囲で再分割して、購入者が選んだ人物、生物、企業に販売できる」と定められています。ただし「営利目的の取引をするという明確な目的で再分割してはならない」とも定められています。大切な人やペットにプレゼントするのは問題ありませんが、利益が発生する不動産投資の対象にはできないというわけですね。

海外セレブから庶民まで幅広い人気

 現在のところ、誰もが簡単に行くことはかなわない月。その土地を買っても行くことはできませんし、投資に利用することもできないとなれば、持っていても意味がないと思う人もいるでしょう。しかし夜空に浮かぶ月を見上げて、この一部が自分のものと感じられることは、夢とロマンにあふれていますよね。月の土地を買うことは、夢を買うことなのです。

 そしてこの夢をすでに600万人以上が購入し、約11億円を売り上げています。購入者にはアメリカのジョージ・ブッシュ元大統領や俳優のトム・クルーズ氏、カリスマ経営者のイーロン・マスク氏などがいる一方、手頃な価格なので一般の人にも人気があり、ロマンを愛する人が全世界にたくさんいることがわかります。

 しかし、近いうちにこのロマンがロマンではなくなるかもしれません。マスク氏は地球外への移住を可能にしようと考え、2016年には100人を移送可能な宇宙船開発に数千万ドルを投資しており、10年後には火星に移住できるようになるともいわれます。これが実現すれば、月に移住できる日も遠くはないでしょう。そうなると、月の土地に関する法律や所有権もより明確に変わっていくかもしれません。

 ルナエンバシー社が販売している月の土地は、地球から見える表面の部分で、月の面積の約59%。約55億エーカーになります。このうち販売済みは約6億1千万エーカーで、全体の約11%。まだ9割近く残っているので、興味がある方は購入を検討してみてはいかがでしょうか。

<参考サイト>
・ルナエンバシージャパン
https://www.lunarembassy.jp/
・ダイヤモンドオンライン 「月の土地」はなぜ売れるのか?架空の土地で売上11億の謎
https://diamond.jp/articles/-/169682?display=b

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