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DATE/ 2020.11.30

「交番」「派出所」「駐在所」の違いとは?

 私たちを守るために日々街の警備をしているお巡りさん。そのお巡りさんの詰め所といえば「交番」ですが、いっぽうで「派出所」「駐在所」という呼び名も聞いたことがありますよね。この3つの違いは何でしょうか? それぞれの施設の違いについて調べてみました。

「交番」と「駐在所」の違い

 警視庁のHPによると、「交番」および「駐在所」は“地域住民の身近な所にあり、警察官が勤務して、地域住民の皆さんのくらしの安全を守る活動をする拠点”とあります。交番と駐在所のいずれも警察署の地域課という部署に属し、主な仕事は担当地域の警備(パトロール)や犯罪捜査、家庭や事業者へ訪問活動(巡回連絡)を担うという点で共通しています。

 では両者の違いは何かというと、主に都市部に置かれ、数人(二人以上)の警察官が交替で勤務するのが交番です。いっぽう駐在所は主に郊外や山間部などに設置され、原則一人(一家族)の警察官が寝泊まりしながら勤務しています。交番に居住スペースがあるのが駐在所というわけです。

 駐在所で働く警察官は24時間勤務となりますが、もちろん非番の日もあります。また会議等で本署に出向く時など駐在所を離れる際は、配偶者が業務を代行することが多いそうです。

「派出所」は交番の旧名

 さて、いっぽうで「派出所」という名称も馴染み深いものとなっていますが、これは交番の別称(旧称)です。この呼び方は、交番の成り立ちに深く関係しています。

 明治7年(1874)初めて「交番所」が設けられました。交番所は「(警察官が)交替で番をする所」という意味で、もともと施設ではなく警察官が交替で立ち番をする特定の場所を指しました。警察署から徒歩でパトロールを行いながら指定の場所(街中の交差点など)に向かい、立ち番をしていたそうです。

 しかし大雨の日など、天候の悪い日の立ち番は大変な負担となります。そこで交番所には建物が建てられ、そこに複数人の警察官が詰める形に変化。明治14年(1881年)3月に警察官を派出させるという意味で「派出所」という名称に改称し、明治21年10月には都市部の「派出所」と地方の「駐在所」に統一されました。

 とはいえ市民の間では「交番」の呼び名が残り、海外でも「交番(KOBAN)」は日本独自の制度として広く知られるようになっていました。そこで平成6年(1994年)警察法が改正されたことを機に「派出所」は「交番」へと改称。昨今は来日する海外観光客が増えたことで、案内板も「KOBAN」と書かれるようになったのです。現在は「派出所」よりも「交番」と呼ぶほうが正しいということですね。

 なお、現在でも「○○警備派出所」などと一部で派出所の名称が使われている場合があります。空港や大使館、官邸といった、特に警備を厳重にしたい場所に置かれることが多いようです。また「交番の出張所」といった意味合いで、期間限定の派出所が置かれることも。国際サミットのような大イベントの時や、登山シーズンの時には河口湖や御殿場といった登山口付近に設置されるそうです。

 交番(派出所)と駐在所の違い、お分かりいただけたでしょうか?
道すがら交番を見かけたときは、ぜひその名称の違いにも注目してみてくださいね!

<参考サイト>
・交番まめ知識(警視庁)
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/shokai/pipo/webpb/koban_qa.html#cms2
・交番(警視庁)
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/shokai/katsudo/koban/koban.html
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