テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.12.26

すぐに「マウント」を取る人の心理と対処法

 「マウントを取る」で用いられる「マウント」の由来「マウンティング」(mounting)は、『生物事典』に「哺乳類の雄が他の雄に馬乗りする行動」と定義されているように、サルなどの集団で生活する動物が群れの中で優位性を確認するための行動を意味しています。

 ニホンザルで詳しく研究された「マウンティング」ですが、近年は心理学や脳科学の観点からも援用され、人間の社会的な言動にまで意味を広げて用いられるようになりました。

 そして、客観的に見れば優位性がなかったとしても、とにかく相手より優位に立ちたい人を、“すぐに「マウント」を取る人”と表するようにもなってきました。

すぐに「マウント」を取る人の心理とは?

 そんな風に広く用いられるようになってきたすぐに「マウント」を取る人ですが、その心理を表すと、「自信がない」の一言につきます。

 自信がない人が本来なすことは、努力して実力を付けることによって自身を持つこと。すなわち自分の絶対値の強化にいそしむべきです。

 しかし、すぐに「マウント」を取る人は、自信のなさをゆがんだ承認欲求の強化や現状に対する不満へなどへ転化し、集団内で相対的な序列を高めることを目的化して、安易に安心感を得ようとします。つまり、自分を高めることにリソースを割くことをせずに、他人を落とすことによって、たとえ一時的であったとしても、相対的に自分の価値を高めることを目的としています。

 そのため、すぐに「マウント」を取る人は往々にして、横着、怠惰、不勉強、不見識、他責的、他罰的、攻撃的、利己的、わがまま、身勝手、不合理、不条理、自己愛の肥大、客観性の欠如、社会性の未成熟などの特徴が目立つことになります。

すぐに「マウント」を取る人の対処法

 すぐに「マウント」を取る人の対処法として、心理カウンセラーの石原加受子氏は、1)「自分なんて」という卑屈な気持ちを取り払うこと、2)攻撃を受けても何食わぬ態度で過ごすこと――が、最も重要な基本姿勢であるといいます。

 そして、「攻撃をしかけられたときには、何も言わずじっと相手の目を見つめてみましょう。あなたを攻撃する人の目は、実はあなたの頭頂部辺りを見ています。あなたが相手を苦手に感じるように、心の中では相手もあなたが苦手なのです。その状態であなたから目を合わされたら、相手は驚き、不気味に感じて話しかけづらくなります」と、述べています。

 他方、サルの世界から得られた用語「マウント」には、サルにまつわる真理ともいえることわざを援用し、役立ててほしいとも思います。すなわち、「見ざる・聞かざる・言わざる」の「三猿(さんえん)」の観点に立って、精神的にも物理的にも、すぐに「マウント」を取る人をできうる限り避けるということです。

 「三猿」の本義は“悪しきことを遠ざけよ”ですが、すぐに「マウント」を取る人に対する最適の対処法は、関わりをできるだけ遠ざけたり避けたりすることにつきます。

 人間関係はどこまでいっても相対的なものであるからこそ、自分で自分を満たせない人や満たそうとしない人とは、避けることや関わりを断ったり減らしたりすることが王道かつ無難です。ぜひ自身を省みつつ、試してみてほしいと思います。

<参考文献>
・「マウンティング」『旺文社 生物事典』(旺文社)
・「職場の最新心理学<52>マウンティングばかりする先輩は何を考えているのか」『プレジデント』(2018年10月1日号、石原加受子著、プレジデント社)
・『他人を攻撃せずにはいられない人』(片田珠美著、PHP新書)
・「見ざる聞かざる言わざる」『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

玉川上水の歴史…約8カ月で完成?玉川兄弟の功績とは

玉川上水の歴史…約8カ月で完成?玉川兄弟の功績とは

『江戸名所図会』で歩く東京~上水と十二社(1)「水の都」江戸の上水道

都市を繁栄させるためには水道の整備が不可欠だが、江戸は世界でも有数の水道網が張り巡らされた都市だった。『江戸名所図会』に描かれた玉川上水を中心に、「水の都」としての一面を持った江戸の上水道について深掘りしていく...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/05/05
堀口茉純
歴史作家
2

生成AIの規模拡大で急増する世界的エネルギー事情

生成AIの規模拡大で急増する世界的エネルギー事情

日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(4)エネルギーにおける「神経と血管」

AI技術の急速な発展と需要の拡大で、これからさらに世界的に電力消費が増えていくことが予想される。デジタルインフラを支える電力がますます必要とされる中で、カーボンニュートラルなエネルギー供給をいかにして安定的に行う...
収録日:2024/02/07
追加日:2024/05/04
岡本浩
東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者
3

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か

国際政治を地理の観点からひも解く「地政学」という学問。近年、耳にすることも多くなった分野だが、どのような手法や意義を持った学問であるかを学ぶ機会は少ない。その基礎から学ぶことのできる今回のシリーズ。まず第1話では...
収録日:2024/03/27
追加日:2024/04/30
小原雅博
東京大学名誉教授
4

幸運と不運はあざなえる縄のごとし…非行少年の運と実力

幸運と不運はあざなえる縄のごとし…非行少年の運と実力

運と歴史~人は運で決まるか(3)幸運と開運

「幸運」と似た言葉に「開運」があるが、この二つは歴史的にみると少し違うと山内氏は語る。かつて或る国に非行少年だったが運にめぐまれて宰相に上り詰めた男がいたが、彼は本当に幸運だったのか。そもそも幸運とは何か。また...
収録日:2024/03/06
追加日:2024/05/02
山内昌之
東京大学名誉教授
5

モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?

モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?

政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(1)二人の思想家

18世紀フランスの最も重要な思想家は、モンテスキューとルソーである。この二人は、前者が自由主義思想を確立し、後者が民主主義思想を発展させた点や、経済に対する考え方などに関して相違点を持つが、専制に対する手厳しい批...
収録日:2020/08/17
追加日:2020/09/19
川出良枝
東京大学大学院法学政治学研究科教授