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DATE/ 2023.04.22

「世界のワースト料理100」日本料理もランクイン

 世界の食文化をまとめているインターネットサイト『テイスト・アトラス』では、毎年「テイスト・アトラス賞」を発表しています。2022年版のランキングでは「世界で最も料理がおいしい国」部門で、日本が95か国中4位にランクイン。「世界で最もおいしい料理」部門では日本のカレーが1位になりました。

 こちらのサイトでは、「おいしい国」や「おいしい料理」が発表されている一方で、「Worst Rated DISHES in the World」──つまり「世界で最も評価の低い料理」もまとめられています。じつはこのランキングにも日本発の食べものが入っているのです。みなさん、ランクインした食べものが何だか予想がつきますか?

 日本独特の食べものである納豆? 臭いがキツいクサヤ? それとも海外の方には衝撃的な酸っぱさをほこる梅干しでしょうか?

 意外なことに、どの食べものもランクインしていません。それでは「世界で最も評価の低い料理」(2023年4月1日時点)にランクインした日本の食べものをご紹介していきましょう。

洋食かと思いきやじつは日本食の「ナポリタン」

 現在のランキングには、2つの日本の食べものがランクインしています。

 まず55位には、日本の純喫茶やファミレスなどでもお馴染みの「ナポリタン」が選ばれています。名前にイタリアの都市「ナポリ」がついているので、イタリア料理と思っている方も多いかもしれませんが、じつは日本発祥の料理です。昭和20年代に、横浜のホテルニューグランドで考案されたことが、その歴史のはじまりとされています。

 当時、横浜には進駐軍として来日していた多くのアメリカ兵がいました。ホテルの総料理長だった入江茂忠氏は、兵士の一人がパスタとケチャップを混ぜて食べているのを見て、ナポリタンを思いついたとされています。以来、ナポリタンのレシピは全国に広まり、多くの日本人に愛される料理となったのです。

 しかし、今回はワースト料理としてランクインしています。『テイスト・アトラス』の紹介ページによると、「嫌い」と投票した人はいない反面、好きでも嫌いでもない、「無関心」という人が5割以上。逆に「好き」という人は3割ほどでした。西洋の基準からすると、ナポリタンのパスタは少々茹ですぎのようで、海外のパスタを食べ慣れた人からすると、すこしべちゃっとしているようです。けれど、それもナポリタンには欠かせないポイントです。

日本の伝統的なお菓子が意外なランクイン

 そして、59位にランクインしたのは、穀物を加工したお菓子である「おこし」です。こちらの歴史は、ナポリタンの歴史よりもずっと古いものになります。一説によると、その起源は平安時代にまでさかのぼり、中国から伝来したお菓子の製法がもとになっているのだとか。江戸時代には庶民の間にも広まり、以降現代に至るまで多くの人に親しまれています。

 有名なものでは、浅草の「雷おこし」、大阪の「岩おこし」があげられます。インバウンドで多くの観光客が海外からやって来る都市の名物でもあり、自然と観光客の口に運ばれた回数も多かったのかもしれません。

 こちらは「嫌い」という人と、「好き」という人がそれぞれ1割、「無感心」が9割弱ほどという内容でした。長く愛されている素朴な味な分、「日本のお土産」「日本のお菓子」という特別感には一歩届かなかったのかもしれませんね。

世界ワースト料理のトップ10の内容は?

 では、ここでランキング上位10位の食べものを見て行きましょう。

1位 Hákarl(アイスランド)
⇒サメ肉を発酵させ乾燥させた食べもの
2位 Spaghetti Pie(アメリカ)
⇒コロラド州の象徴的なパイでパスタが使われている
3位 Fried Spider(カンボジア)
⇒タランチュラなどのクモをフライにしたもの
4位 Luther Burger(アメリカ)
⇒バンズの代わりにドーナツを使ったハンバーガー
5位 Indigirka Salad(ロシア)
⇒サハ共和国発祥の魚のサラダ
6位 Devilled Kidneys(イギリス)
⇒スパイスソースで調理された子羊の腎臓
7位 Sklandrausis(ラトビア)
⇒ラトビアの伝統料理でライ麦を使った甘いパイ
8位 Pizza Cake(カナダ)
⇒2010年代頃から新しく広まった鍋などを使い焼いた多層のピザ
9位 Tortilla de raya(ペルー)
⇒エイの干物を使ったオムレツ
10位 Riz Casimir(スイス)
⇒スイス発祥のカレーライスで果物が入っているのが特徴

 世界中のさまざまな国の食べものがランクインしています。わたしたちにも想像がつきやすいスパゲッティーのパイなどの料理もあれば、クモのフライといった驚きの料理もあります。

 それぞれのページに料理の詳細や、その歴史、レシピの特徴が紹介されていますので、気になる方はぜひ『テイスト・アトラス』のページへ足を運んでみてください。

食べものから理解するそれぞれの国の文化と歴史

 食文化はそれぞれの国や地域に根付いた大切な文化です。意外な食材が使われていたり、変わった加工過程があったり、誕生の背景にはさまざまな歴史があります。それを口にして「好き」「嫌い」を感じることも、その国の文化をより深く理解するためには大切なことかもしれませんね。

 コロナ禍が始まってから早3年。少しずつ海外旅行のハードルも下がって来ました。行ってみたい国や、旅行予定の国の美味しいもの、クセの強い伝統料理、庶民が親しむお菓子を調べ、実際に口に運んでみる機会を設けてみてはいかがでしょうか。

<参考サイト>
・テイスト・アトラス
https://www.tasteatlas.com/
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