テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.10.30

外国人旅行者を取り込む「民泊」~法律に先行するAirbnbとビジネスチャンス

 「ホテルの予約が取れない」。出張先の宿泊先を探すサラリーマンや、旅行をするファミリーが悲鳴を上げている。訪日外国人旅行客が急増しているうえ、日本人の国内宿泊数も右肩上がり。東京五輪が行われる2020年には宿泊施設の供給が逼迫することが確実視されている中、救世主として期待されているのが「民泊」だ。

 民泊とはホテルや旅館ではなく、一般の住宅に宿泊すること。観光庁がこのほど発表した宿泊旅行統計調査によると、2015年7月の東京のビジネスホテルの稼働率は93.2%。大阪のビジネスホテルは90.5%、リゾートホテルは95.3%にまで達している。「ホテルの予約が取れない」という悲鳴も納得の数字だ。かといって宿泊施設を次から次へと建設できるわけでもなく、“宿泊難民”の新たな受け入れ先として民泊が注目を浴びている。

 特に盛り上がりを見せているのがインターネットを介しての民泊で、アメリカ発のサイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」と「couchsurfing」が大手。前者は宿泊料が発生し、後者は発生しない、というのが最大の違いだ。どちらも欧米を中心とした訪日外国人旅行者に広く知られている。

 日本では民泊がまだ一般的でないため、「え、見ず知らずの人の家に泊まるの?(or見ず知らずの人を家に泊めるの?)」と抵抗があるかもしれないが、両サイトともに評価システムを導入している。泊めた、あるいは泊まった際に各ユーザーが評価し合うため、ヤフオクのように実績を積み重ねることで信頼を醸成することになる。

 特にAirbnbは宿泊代金が発生するため、コミュニケーションが問題なく取れたか、部屋のアクセスは良かったか、部屋は清潔だったか、などチェック項目が細かく用意されており、過去の評価を見ることで信頼のおけるホストかどうか判断することができる。また、Airbnbは宿泊者が宿泊先に損傷を与えた際、サイトが損害を補償するというサービスもある。

 ホストの立場から見ると自宅の余ったスペースで副業をできるうえ、外国人旅行者とコミュニケーションを取れるという楽しみがある。宿泊客からすると日本の一般的な家に泊まることで、ホテル泊まりでは体験することができない日常を味わえるということが最大の魅力だという。

 また、自宅の余ったスペースを提供するだけでなく、最近では宿泊客用に物件を用意し、個人のビジネスとしてサイトを利用しているユーザーもいる。一般的にホテルよりも安い価格帯が多いため宿泊代を節約したい旅行者に支持されており、その一方でホストはうまく運用すれば家賃を大きく上回る収入を稼ぎ出すこともできる。両者にとってウィンウィンなサービスとも言える。

 だが、法律の観点ではグレーだ。宿泊料を取り、宿泊させる営業として見るとAirbnbは旅館業法に引っかかる可能性がある。もしこれに該当するならば、都道府県知事に許可を取らなければいけないのだが、現状は見逃されている。

 こうしたグレーな状況を改善するため、東京都、神奈川県、千葉県成田市でつくる「東京圏」など一定の地域で民泊を認める方針が政府によって固められた。羽田空港のおひざ元である東京都大田区では年内に民泊を認める条例制定を目指すなど、限定的ではあるものの認可されていく流れができている。

 認可が進めば、副業として人気を集めることは必至。賃貸の場合大家の許可を取る必要はあるものの、宿泊施設の需要が増していくことは間違いないのでおいしい分野だ。不動産業者にとっても、民泊用の物件の人気が高まることで新たな需要が生まれるだろう。

 大きなビジネスチャンスが生まれる民泊、今のうちにチェックしておいても損はないはずだ。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは

繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは

『江戸名所図会』で歩く東京~内藤新宿(2)「夜の街」新宿の原点

歌舞伎町を筆頭に、東京でも有数の繁華街を持つ新宿だが、その礎は江戸時代の内藤新宿にあった。遊女が働く飯盛旅籠(めしもりはたご)によって、安価に遊興できる庶民の「夜の街」として栄えた内藤新宿の様子を、『江戸名所図...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/04/28
堀口茉純
歴史作家
2

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教

ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
橋爪大三郎
社会学者
3

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(3)電力の部分最適と全体最適

サステナブルな電力の供給と消費が求められる現代社会。太陽光発電のように電力の生産拠点が多元化する中で、それぞれの電力需給と国全体の電力需給のバランス調整が喫緊の課題となっている。実はヨーロッパなどの「再エネ比率...
収録日:2024/02/07
追加日:2024/04/27
岡本浩
東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者
4

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(4)サウジアラビアとイランの存在感

中東のグローバル・サウスといえば、サウジアラビアとイランである。両国ともに世界的な産油国であり、世界の政治・経済に大きな存在感を示している。ただし、石油を武器にアメリカとの関係を深めてきたのがサウジアラビアであ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/24
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス

「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24
三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授